2012年01月20日

2012年1月19日の伊皿木蟻化(五十嵐彰)氏blogを読んで

2012年1月19日の伊皿木蟻化(五十嵐彰)氏blogで,脱原発世界会議 2012 YOKOHAMAへ参加した感想を述べられている。その中で違和感を持った点があった。うまくまとめられなかったが,それらについて以下に述べる。

「争い(争奪・戦争)を引き起こす石油と原子力から平和を生み出す太陽光などの自然エネルギーへシフトしよう」という飯田哲也氏の呼びかけが心に残った。
スペインにおける「太陽光バブル」問題やアメリカ合衆国における「バイオマスエネルギーバブル」は,平和の所産なのだろうか。また,自然エネルギー先進国とされるドイツにおけるエネルギー供給は100%自国産ではなく,フランス等からの輸入がないと供給量が確保できないと言われている。EU全体で見た場合のドイツの脱原発の影響がどの程度なのか考察なしに,評価するのは難しいように思われる。こうしたことを考慮すると,個人的には「平和を生み出す太陽光などの自然エネルギー」という意見に私は同意しかねる。
私は,自然エネルギー発電による供給割合を増やす必要はあると考えるが,現状では原発の代替技術にはなり得ないと考える。原発を廃止するのであれば,現状では火力発電の割合が増加するのはやむを得ないと考える。そうなると,京都議定書の第一約束期間の目標達成は無理だろうが,それはやむを得ないと考える。地球温暖化対策は必要だが,福島第一原発事故以前と以後では,同一基準で議論することは無理だと考える。

決して土に還元しないプラスチック、決して土に帰らない合成物質(ダイオキシン・PCB・プルトニウム・・・)。かつてはあらゆる物質が、自然環境と物質文化環境との間で生成と消滅のサイクルを形成していた。
「ダイオキシン・PCB・プルトニウム」は「決して土に帰らない合成物質」ではなく,生分解性が悪いあるいは半減期が長いため問題となっている。ちなみに,ダイオキシン類は燃焼によって発生するため,おそらく人類誕生以前から地球上に存在していたものと思われる。プルトニウムも,微量ながら自然発生するらしい。これらの物質のリスク管理はしっかり行われるべきだが,科学的に誤った認識は改めていただきたい。この文章は,五十嵐彰氏が『石器文化研究』第6号に発表した文章の一部とのこと。『石器文化研究』は石器文化研究会の刊行物であり,考古学という科学分野,特に旧石器考古学分野の専門誌と私は認識している。科学的議論を行う誌上において,科学的に誤った主張を行うのは如何なものか。

テレビや新聞に頻繁に登場する専門家・研究者たちが関連組織からどれほどの資金供与を受けていたかなどが明らかにされつつある。
問題なのは,「資金供与」という行為そのものではなく,原発に対してどのように発言したかどの程度影響したか,だろう。「資金供与」に科研費が含まれるか不明だが,仮に含まれるとすると,いわゆる「熊取六人衆」のうち,小出裕章氏以外は科研費を受けている。科研費は原子力分野以外,たとえば考古学分野でも受けている研究者は複数いるわけだが,そうした研究者たちは,科研費の出所の国の意向に沿った成果報告をしているのだろうか。素朴な疑問は尽きない。

一人一人の問題意識を高め、持続させることが欠かせない。
日本という国に、本当の意味での「民主主義」が根付くかどうかが問われている
前半の意見には私も同意する。なお,自分たちの立場に都合の悪い情報でも,事実であればきちんと受け入れることのできるリテラシーを持つことも併せて必要だろう。
後半について,私は,「ピースボート」や「グリーンピース・ジャパン」が,「本当の意味での「民主主義」」に基づく活動をしているとは思えない。
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2012年01月15日

A型肝炎と有機農産物

予防接種について調べていたら,A型肝炎について次のような情報を知った。

東京都感染症情報センター「A型肝炎 Hepatitis A
HAVは患者の便に排出され,この便に汚染された水・果物・野菜・貝類・氷などを介して感染します(糞口感染)。また,性的接触による感染もあります。

食品安全委員会ファクトシート「A型肝炎(Hepatitis A)」(pdfファイル)
A型肝炎は糞口感染で引き起こされるため,HAVに汚染された飲食物の摂取や感染調理従事者からの飲食物への二次汚染を防止することが感染予防には必要です。一般的な感染予防法としては,十分に加熱調理された飲食物の摂取,食事前の十分な手洗いなどがあげられます。

人糞を原料とした堆肥はもちろんのこと,海外における有機農産物が原因と思われる事例から,一般的な堆肥からの感染リスクもあると考えられる。上記の東京都感染症情報センターのウェブサイトによると,食品の中心温度85℃以上で1分間以上の加熱で予防できるとされており,有機農産物でも生で食べなければよいようだ。
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2012年01月07日

非科学的で的外れな主張

河北新報2012年1月6日朝刊3ページ「東北再生あすへの針路 再生委員に聞く (4)東北大名誉教授・首藤伸夫氏/住民同意 移住の大前提」より,一部引用。
―津波がヘドロまみれだった原因は何か。
 「戦後、エネルギー資源は石油に大きくシフトした。木炭は必要なくなり山が荒れ、松食い虫がはびこった。農作業も効率化が進んだ。殺虫剤や除草剤などの農薬が大量に使われ、川を通じて海に流れ込んだ。水洗便所の普及も海を汚した。人間が便利さを追求した結果が大量のヘドロだ」

ここで言う再生委員とは,河北新報社が設置した「東北再生委員会」なる組織の構成メンバーのことである。
首藤伸夫氏の経歴を同ページから引用する。
東大卒。旧建設省土木研究所研究員、中央大教授などを経て77年から98年まで東北大工学部教授。専門は津波工学。

津波堆積物の様相については,東北学院大学松本秀明教授を始め,多くの地質関係研究者がリポートを出しており,インターネット上での多くの文献を読むことができる。
松本教授の資料のうち,「◇沓形遺跡 遺跡見学会資料(平成23年8月27日)」(pdfファイル)は,図入りで解りやすい。
その中で松本教授は,次のように述べている。
仙台平野の津波堆積物は,中〜細粒砂および泥質堆積物から構成される
(文字強調はtahataによる)

泥質堆積物東日本大震災だけでなく,沓形遺跡(弥生時代中期)など,近代以前の津波堆積物にも存在していただろうとされている。
先に挙げた首藤氏の主張が氏の考え通りであるならば,明らかな事実誤認だろう。
農薬の水域への影響は本山直樹博士のリポートなどいくつも報告があり,首藤氏の主張は非科学的であることは明らかだ。しかも,農薬の水域への影響を懸念したリポートでも,農薬の使用によってヘドロ発生に結びつくという発想は,私は聞いたことがない。
マツクイムシ被害は,マツノザイノセンチュウによる病害である。確かに山林の管理の不徹底によって発生が助長された面もあろうが,主原因であるマツノザイノセンチュウは侵入病害とされ,明治時代以降に輸入木材ともに日本列島に侵入したといわれている。少なくとも,マツクイムシ被害がヘドロ発生の主原因ではない。
水洗トイレからの汚水を直接河川や海へ流せば,水質汚染の原因となろうが,水洗トイレの普及と汚水処理施設である公共下水道や合併処理浄化槽,単独処理浄化槽の普及はセットとなっている。下水道や浄化槽の整備は,水質汚染対策や生活衛生の向上の一つの目安にもされえちる。つまり,水洗トイレの普及が水質汚染の原因とするのは明らかに誤りなのである。現在の日本での水質汚染の主原因は生活排水(トイレ汚水は含まない)と言われており,資料によっては水質汚染原因の70%も占めるとされている。この辺について首藤氏は,中西準子博士の著書で勉強しなおす必要がある。

以上から明らかなように,「人間が便利さを追求した結果が大量のヘドロだ」と短絡的に決めつけるのは,極めて非科学的である。
もちろん,環境負荷低減を目指すためにも,さらなる水質改善対策を講じていく必要はあるだろう。しかし,それは首藤氏の主張とは別の問題である。
自分の主張を正当化するために事実を曲げることは,大学教授であろうと決して許される行為ではない。むしろ,教育者でもある大学教官こそ,きちんとした科学的立場から意見を述べるべきだ。


<参考リンク>
津波堆積物を用いた過去の巨大津波の研究(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)
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2011年11月26日

BSE全頭検査では,牛肉の安全性は担保されない

河北新報社2011年11月25日に,「牛肉輸入制限/緩和して安全性保てるのか」と題した社説が掲載された。
その中で,
日本は初の感染牛が確認された01年に国による全頭検査を開始。05年から対象を21カ月以上に緩めたが、自治体によって全頭検査が続けられ安全性が担保されてきた。

という記述があるが,これが明らかな誤りであることは,周知の事実である。
全頭検査では,全てのBSE感染牛を検出することは不可能である。
では,何故47都道府県全てで未だに全頭検査が行われているのか。
その理由が,静岡市ウェブサイトに端的に書かれている。
そもそも全頭検査を行ったのはどのくらいの牛がBSEに感染しているのかを把握するためで、それが安全確保のためだと政治家や消費者に誤解され、現在に至っています。

 国では2005年に検査対象を21か月齢以上に改めましたが、これは若い牛はたとえBSEに感染していても検査で陽性を検出できないので、検査の意味がないからです。

 2009年現在、全ての自治体では全頭検査が続けられていますが、これは安全確保のためではなく、誤解が根強く残る消費者の安心のためであるといえます。

つまり,全頭検査では牛肉の安全性は担保できないが,消費者の安心を得るために,パフォーマンスとして全頭検査を行っているのだ。
全頭検査によって,牛肉の「安全性が担保」されるはずもない。

BSE対策で有効とされるのは,次のような対策である。
1 飼料対策(肉骨粉を与えない,要は共食いさせない)
2 BSEの原因となる異常プリオンが多く含まれる,いわゆる特定危険部位の除去
3 と畜場でのピッキング(暴れるのを防ぐために,牛の脳や脊髄にワイヤーを差し込む方法。ピッキングによって異常プリオンが家畜体内に回るリスクが高まる)の禁止
牛肉の安全性担保ためには,全頭検査の継続ではなく,上記の対策の徹底が必要なのである。

なお,日本では2001年から全頭検査を行っているが,OIE(国際獣疫事務局)のBSEリスク・ステータスでは「不明なリスク」のままであった。日本が「管理されたリスク」と評価されたのは,2009年。その大きな要因は,日本でのピッキングが2009年に全廃されたことである。つまり,日本で行われている全頭検査は,国際的な科学的知見では評価されていないのである。
このピッキングについては,河北新報の社説では一切触れられていない。こうした情報は,インターネットで少し検索すればすぐに見つけることができるのだが,そうした努力さえ,河北新報社は行っていないのだろう。

これだからマスメディアは,「マスゴミ」と揶揄されるのだ。

なお,先に引用した静岡市が,全頭検査について「安全のためではなく,消費者の安心を得るため」と,はっきりと説明しているのには感心した。
また,同ページでは,次のように説明している。
食品安全委員会のリスク評価では、日本国内において、BSE感染牛が原因でヤコブ病にかかる危険性は、「無視できる〜非常に低い」とされています。

 しかし、この評価は、全頭検査のおかげではありません。

このような自治体が存在することに,多少とも希望を持ちたい。


<2011年12月11日追記>
河北新報の社説の件を食品安全情報ネットワーク(FSIN)に情報提供したところ,河北新報社への公開要望書として対応していただいた。
11月25日付け社説「牛肉輸入制限/緩和して安全性保てるのか」についての公開要望書



<参考リンク>
中西準子のホームページ(BSEを取り上げた雑感)
BSE及びvCJDについて(内閣府食品安全委員会)
我が国のBSEステータス認定について(農林水産省)
国際獣疫事務局 (OIE) 総会にて日本はリスク管理の国に認められた(くらしとバイオプラザ21)
月齢制限なんて必要ない(mixi雪兎さんの日記)
BSE問題(Wikipedia)
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2011年11月14日

野菜の洗浄に関する注意喚起

食品安全情報(微生物)No. 20 / 2011 (2011.10.05)から,引用。
2.野菜の洗浄に関する注意喚起
Consumers reminded to wash veg
30 September 2011
http://www.food.gov.uk/news/newsarchive/2011/sep/washveg
英国食品基準庁(UK FSA)は、最近発生した 2 件の大腸菌アウトブレイクを受け、野菜を保存および調理する際に適正衛生規範に従うよう消費者に注意喚起している。
ドイツではこの夏、3,000 人以上の患者が感染した大腸菌 O104 アウトブレイクが発生した。このアウトブレイクは、最終的にフェヌグリーク種子のスプラウトとの関連が判明した。患者はフランスを含む数カ国でも報告された。
英国では 2010 年 12 月〜2011 年 8 月に、大腸菌 O157 PT8 患者が各地から計 250 人報告された。このアウトブレイクはすでに終息したが、ドイツのアウトブレイクとは関連がなく、異なる大腸菌株に関連していた。英国健康保護庁(UK HPA)は、包装しない状態(loose)で売られた特定の生野菜の自宅での取扱いと疾患とが関連していたことを発表し、これらの野菜は取扱い方法が適切であれば喫食しても安全であったが、病原菌を含有する土が付着していた可能性があったとした。
FSA は、これらのアウトブレイクを受け、野菜を調理する際の安全性に対する消費者の考え方や行動について委託調査を実施した。その結果、以下の 3 点が明らかになった。
・ 野菜による食中毒についてのリスクの認識度は低く、調査対象の消費者の多くは食肉を取扱う場合の方がより慎重であった。
・ 野菜からその他の食品への交差汚染が食品安全のリスクであるとの意識は限定的であった。
・ 土壌中の細菌によるリスクについての意識を高めることで、過度の不安を与えることなく、野菜の適切な洗浄および取り扱いへの理解を促すことができる。

農耕地において農作物に土壌が付着しているのは決して不思議なことではないが,台所での衛生管理はこれとは別。
生産現場においても,GAPなどによって衛生管理意識の向上が望まれるが,少なくとも日本においてはかなり難しい。GAPに取り組む意味を,普及指導員でさえ「商品の差別化」程度にしか考えておらず,メリットが見えにくいし,単に面倒な作業が増えるだけといった認識しかない。

清浄野菜」は,今やどこに行ってしまったのだろうか。
posted by tahata at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする