2014年01月09日

有路昌彦氏の記事と河北新報の社説<br>(アクリフーズ冷凍食品からマラチオン検出(その4))

アクリフーズ冷凍食品からマラチオン検出された件については,次のような点から事件性が高いと思われ警察も動き出しているが,未だ原因解明の糸口が見えてこない。
 異なるラインで製造された製品でマラチオンが検出
 製造日が異なる製品でマラチオンが検出
 マラチオン濃度が,食品内部より表面で高い
 今のところ,包装に穴などは確認されていない

そうした中,2014年1月7日付BUsiness Journalに,近畿大学農学部准教授の有路昌彦氏の「アクリ食品農薬混入テロ可能性大ジャーナリズムジャーナリズムアクリ農薬混入事件、なぜフードテロリズムの可能性高い?企業の責任追及、問題解決の妨げに」と題した記事が掲載された。
今回の件が意図的な混入事件であるとの条件付ではあるが,有路氏の記事は冷静且つ的確な内容だと思う。この記事の中で有路氏は,アクリフーズも被害者のひとりであって,必要以上の糾弾は問題解決にならないと述べられている。

こうした有路氏の主張を真摯に受けてとめて欲しいマスメディアの一つが,河北新報である。
河北新報2014年1月8日朝刊の社説「冷凍食品に農薬/ずさんな対応で被害拡大」では,完全なアクリフーズ叩きの様相を呈している。

マルハニチロ・アクリフーズのプレスリリースが事実であれば,アクリフーズの当初の対応は異臭対策としては大きな問題はない。製造ラインの工事がクレームと近い時期に行われていたのだから,まず工事に関係する資材を疑うのは当然だろう。
仮に農薬の混入が疑われたとしても,農薬成分を明らかにするのは決して容易ではない。日本で農薬登録されている農薬成分は,約500成分(2010年9月30日現在で538成分)ある。近年は複数の民間分析機関でスクリーニングテストを実施しているが,全成分を一度に分析することは無理だろう。スクリーニングテストである程度絞り込まれても,本当にその成分かどうか精度の高い分析で確認する必要がある。当て推量で原因を絞り込むわけではないのだ。
マルハニチロ・アクリフーズのプレスリリースで時系列に主な対応が示されているのだから,マスメディアとしてその内容を精査した上で批判すべきなのだが,河北新報の社説では,1カ月以上も放置した責任は極めて重大と,アクリフーズが全く何も対応してなかったかのような論調で全くいただけない。さらに,公表遅れについて、「群馬工場の工事で使用したペンキの付着ではないかと疑った」と釈明しているが、全く理由になっていない。と主張するのだから,開いた口が塞がらない。

プレスリリース等では触れられていないが,アクリフーズが食品メーカーとして通常のクレーム対応をしたのであれば,保存していたであろうサンプルやクレームを受けた際に製造していたロットで異常がないか確認したものと思われる。そこで異常が確認されなければ,クレームを受けた製品或いはロットに何らかの異常があったものと判断し,直ちに製造ラインを止めることはしないだろう。それを河北新報の社説は,まず製造ラインを止めて原因を解明するのが当然と,安易に製造中止を求めているが,如何なものか。
マスメディアは常日頃から主な業界の現場をきちんと取材して,基本的な知見を身につけておくべきだろう。そうした基本的知見に基づき,こんかいのような件について,マスメディアとしてしっかりした取材をしていただきたい。

アクリフーズの対応に全く問題がないと言うつもりはない。
2013年12月27日に2,200ppmのマラチオンが検出されたことが判明していながら関係機関への連絡や公表が12月29日と遅れたことについては,対応の遅れを指摘されて当然である。また,ARfDやLD50などの認識不足についても,釈明の余地はない。

なお,河北新報社説では残留農薬基準の100万倍を超える濃度と記載し,同朝刊の27面記事でもコロッケ衣から農薬260万倍 アクリ社の冷凍食品残留農薬基準(0.01ppm)の260万倍と記載が見られる。
こうした表現については,先のエントリーでマラチオンの毒性を読者に何ら伝えていないことを述べた。
アクリフーズを批判するのも結構だが,マスメディアとして情報をきちんと解析して,もう少しマシな情報を提供できないのだろうか。


何度でも述べよう。
これだから,「マスゴミ」と揶揄されるのだ。

(引用部分の強調は,すべてitohによる)
posted by itoh at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする