2014年03月30日

中西準子氏「原発事故と放射線のリスク学」

先ごろ,中西準子氏の新刊,「原発事故と放射線のリスク学」(日本評論社)が刊行された。
刊行後すぐに購入し,一気読みした。

本書のエッセンスは中西氏のウェブサイトでも触れられているが,本書では,それらをまとめて詳しく解説されている。
私が受ける最後の試験“福島”と表現されているように,今までの著書以上に中西氏が強い想い(覚悟)が詰まった1冊との印象を受けた。
私は今まで,放射線被曝に関する書籍を自分なりの視点で選んで数冊読んできたが,中西氏が本書のまえがき(pdfファイル212KB)で原発事故による影響に関する本は,相当数出版されています。しかし,類書はないです。と述べられているように,今までどの研究者・行政機関も触れてこなかった,あるいはオブラートに包む可能ような物言いで述べてきたことが,はっきりと述べられている。

本書を読んでの私なりの感想を述べようと思ったが,安井至氏が自身のウェブサイトで的確な書評をUPしているので,そちらを参照していただきたい。安井氏が取り上げている部分は,いずれも私が強い関心を持った部分でもある。おそらく私は,本書を安井氏ほどきちんとは理解できていないと思っているが,安井氏の書評を読んで,私の本書に対する理解もあながち間違ってはいないと感じた。

なお,安井氏など数氏の書評に対する中西氏のリコメントが,中西氏のウェブサイトにUPされている。本書と併せて是非読んでいただきたい。


本書は,福島第一原発事故による放射線被曝問題について,「ファクト」に基づく解析を実施し,「リスク学」の視点から具体的な提案を行った,おそらく現時点で最良の1冊である。
長い研究人生を歩まれてきた中西準子氏が,今また難問に精力的に取り組まれている姿に,只々頭が下がる思いである。
posted by itoh at 09:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする

2014年03月29日

オーガニック食品とがんの発症

食品安全情報blog2014年3月28日レビューから引用。

・ オーガニック食品を食べる女性はがんになりにくいことはない、研究が発見

The guardian

Women who eat organic foods no less likely to develop cancer, research finds

Friday 28 March 2014

http://www.theguardian.com/society/2014/mar/28/women-organic-foods-develop-cancer

ミリオンウーマンスタディは農薬を使って育てた食品を避けてもがん全体のリスクに差がないことを示した

英国最大の健康研究プロジェクトであるミリオンウーマンスタディの結果がBritish Journal of Cancer,に発表された。著者は「消費者がオーガニック食品を購入する主な理由は健康上の懸念であることから、この結果はとても役にたつ。答えは簡単でオーガニック食品を選んでもがんリスクに差はない。この研究は非常に大規模でしっかりしたものである。」

この研究では50才以上の623 080人の女性にオーガニック食品を食べるかどうかを尋ね、16種類のがんについて調べた。オーガニックを主に食べているヒトでは乳がんのわずかな増加と非ホジキンリンパ腫の21%減少が見られたが数が小さく偶然である可能性がある。

オーガニック食品を宣伝しているSoil Associationはオーガニックを食べることと非ホジキンリンパ腫の関連が無視されていると主張する

英国大規模前向き研究におけるオーガニック食品摂取とがん頻度

Organic food consumption and the incidence of cancer in a large prospective study of women in the United Kingdom

K E Bradbury et al.,

British Journal of Cancer advance online publication 27 March 2014

http://www.nature.com/bjc/journal/vaop/ncurrent/abs/bjc2014148a.html

英国623080人の中年女性を9.3年フォロー。ベースラインではオーガニック食品を全く食べない30%、時々食べる63%、いつも食べる7%だった。オーガニック食品を食べることは非ホジキンリンパ腫以外についてはがん頻度と関連がなかった

英国623080人の中年女性を9.3年フォローとは,なかなか大規模な調査だ。
非ホジキンリンパ腫についての結果を保留するとしても,15種類のがんの発症については,オーガニック食品の接種の有無とは関係がなかったということになる。
非ホジキンリンパ腫については,調査者は偶然の可能性ありとし,Soil Associationはオーガニック食品の影響を無視していると主張。この点については,データ数の問題から,オーガニック食品接種の有無との関係を明確に議論できるのは難しいようだ。
ただ,少なくとも「オーガニック食品の接種が,がんの発症を抑制できる」などといった,ステレオタイプな物言いを否定できる結果ではないだろうか。

もちろん,適量のバランスの取れた食事を摂取することは,オーガニック食品の有無に関係なく重要なことに変わりはない。
posted by itoh at 11:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする