2015年07月20日

森田倫子氏「「農場から食卓まで」の食品安全−HACCP、GAPおよび食品トレーサビリティ−」

必要に迫られて、HACCPやGAPなどの情報をネット検索していたところ、森田倫子氏の2004年2月発表論文「「農場から食卓まで」の食品安全−HACCP、GAPおよび食品トレーサビリティ−」(PDFファイル、578KB)(「レファレンス」No.637(2004年2月))を見つけた。11年前の論文だが、非常に参考になる論文だった。
A4で25ページに及ぶ論文なので詳細は論文を見ていただきたいが、論文後半で考察されている日本における食品トレーサビリティの部分においては、「う〜ん...」と唸ってしまう箇所が数か所あった。まず、それらの箇所を引用する。
食品トレーサビリティは、安全な食品の生産そのものに資するものではない。食品の安全性確保の根本は、安全な生産、安全な処理・加工、安全な流通・販売を行うこと自体である。
日和佐信子氏(2002年5月まで全国消費者団体連絡会事務局長、現在は雪印乳業株式会社取締役)は、我が国においては、トレーサビリティは一般に食品の安全を担保する手段であると誤解され、トレーサビリティが導入されていれば、その食品は安全であるとの誤った認識が広まってしまったと指摘する。
トレーサビリティが、消費者の安全に関して、事故発生後の回収・撤去という形で被害の拡大防止に寄与し、原因の究明に関与して再発防止に役立つこと、表示の信頼性を高め消費者の選択を助ける機能を持つこと、(また、遺伝子組換え体に関して行う場合には、これらに加えて環境影響監視機能も持つこと)についてあらためて評価がなされるべきであろう。
しかし当然のことながら、農業生産の仕様書や農業者の顔写真の公開自体はトレーサビリティシステムではない。
矢坂雅充助教授(東京大学大学院経済学研究科)は、「トレーサビリティへの信頼性を確保するためには、食品とその情報を追跡・遡及するという基本的な機能を持たない生産履歴情報開示システムなどが、消費者にトレーサビリティと混同されないようにしなければならない」とする。
記録する情報の範囲について、松田友義教授(千葉大学大学院自然科学研究科)は、<略>消費者への情報伝達については、生産者は、農薬使用状況等を公開することにより、消費者から安全性に欠けるとの誤解を受けることを危惧しているとし、
新山陽子教授(京都大学大学院農学研究科)は、<略>詳細な生産履歴の消費者への伝達やインターネット・店頭タッチパネルで検索できるようにすることはマーケティング戦略であって、トレーサビリティの本質ではないと指摘し、

以上引用した部分で指摘されている問題について、まず、松田友義氏の意見について触れておく。
同じ意見を生産者から直接聞いたことがあるし、消費者からもそうした誤解した意見を聞いたこともある。この問題はとても悩ましく、松田氏も述べているように、農薬(や食品添加物)に対する適切な理解を深める地道な努力が必要だと思う。この辺は、学校教育における情報リテラシー教育とも関係してくると考えている。

他の部分についてだが、本来、農業者にこうした情報を適切にコーディネートすべき農業改良普及センター職員等の自治体の農業職職員にも、そのまま当てはまる問題点である。まず、GAPや生産履歴開示を農産物販売のマーケティングや付加価値化に利用しようとして、それが叶わないと分かるとアッサリとダメ出ししたり、自分たちが都合が悪いと判断した情報は隠そうとしたり...、と挙げれば切がない。
少なくとも、GAP、HACCP、トレーサビリティシステムなどの概念はきちんと理解すべきと私は思うのだが、そうした知識を得る機会が、オフィシャルの場で組織的に準備されていない。それでいて、農業生産振興や6次化等を産業振興の立場から煽り立て、何か問題が生じても大した責任は取らない。そもそも、そうした場合にまず責任追及されるのは農業者であって、自治体職員ではない。そういった意味では無責任な立場にあるわけだが、私はだからこそ誤った情報を農業者にコーディネートしないよう、きちんと理解すべきと思う。

私の考えは、間違っているだろうか?
posted by itoh at 14:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする