2018年03月25日

農業普及組織と植物防疫

2018年1月16日,日本植物防疫協会主催シンポジウム「植物防疫をどう教えるか」に参加した。
何度か同シンポジウムに参加しているが,今回は技術的なテーマでなかったからか,いつもの6割弱の参加者だった。
シンポジウム講演要旨集がUPされているので詳しくはそちらを参照いただきたいが,その中で,農業普及職員・農業普及組織と植物防疫行政についての宮城県の伊藤氏の報告を基に,各都道府県にある普及指導センターと植物防疫行政の関係について取り上げる。

私は約半年前からGAPについて勉強しているが,JGAP・ASIAGAP,GLOBALG.A.P.,GH評価いずれにおいても,普及指導員は植物防疫分野を始めとする農業技術の専門知識を有するとされており,様々な部分で普及指導員等に指導を仰ぐように求めている。しかし,私の経験上,必ずしも指導を仰ぐに値する職員ばかりではないと思っている。
伊藤氏の報告によると,そもそも農業普及組織の業務に植物防疫行政は含まれないとのこと。また宮城県では,2016年度まで農業普及職員が植物防疫分野を学ぶ機会がなく,職員各自の自己研鑽に任せられていた。しかも,宮城県の農業普及組織には,植物防疫分野を指導する専門員が配置されていないとのこと。自治体によって対応は異なるようだが,少なくとも1つの自治体の実態がこのような植物防疫分野軽ともいえる対応であることは間違いないようだ。
講演要旨では触れられていないが,GAPの推進は農業普及組織の業務として農林水産省が位置付けていると講演で説明されていた。GAPでは植物防疫分野に関係する部分(病害虫防除技術,農薬の適正使用など)が多く取り上げられるが,植物防疫分野の知識をきちんと学んでいない職員・組織が,果たして指導できるのだろうか?
これも講演要旨では触れられていないが,宮城県では,農業普及職員による,違法ではないが技術的に不適切な指導が実際にあったとのこと。すべての職員が不適切な指導を行っているわけではないだろうが,職員のスキルアップに取り組んでいない組織を直ちに信頼することは難しいだろう。

伊藤氏が挙げている技術・知識習得手段は,いずれも農業普及職員でなくとも利用できる。つまり,本人に意欲があれば,農業者であっても農業普及職員以上の植物防疫分野のスキルを身に付けることが可能である。インターネットを活用すれば,信頼できる病害虫情報や農薬情報(登録情報,製品情報等)を入手できる。経験による知識の上乗せ分を考慮しても,少なくとも,勤務年数の短い農業普及職員以上のスキルを身に付けることは難しくないだろう。

こうしてみていくと,農業普及組織を税金投入してまで維持する必要性がどの程度あるのかと考えてしまう。農業普及組織の業務が植物防疫分野だけでないのは分かるが,私は植物防疫分野は農業を支える必須技術の一つだと考えている。そのため,その必須技術を適切に指導できるか疑われる組織に対して,厳しい評価を持たざるを得ない。幸いなのは,宮城県のような事例ばかりでなく,福岡県など組織的に対応している自治体もあること。シンポジウム当日会場から出された意見でも,福岡県以外でも職員のスキルアップに取り組んでいる自治体が紹介されていた。
そうした動きが,全国区になることを期待したい。
posted by itoh at 17:13| Comment(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする