2019年02月24日

「安全・安心な食と食品表示」セミナー

2019年2月23日に開催された河北新報社主催の「安全・安心な食と食品表示」セミナーに参加してきた。

FoodScience時代から勉強させていただいている長村洋一氏と森田満樹氏が基調講演された。限られた時間(各30分間)の中でなるべく分かりやすく解説しようという想いが伝わってきて,とても楽しく聞くことができた。長村氏が食の安全と食品添加物の安全性について,森田氏が食品表示についてそれぞれ解説された。その後,約1時間のパネルディスカッションがあり,そこでも事前に参加者から受けていた質問を中心に丁寧に解説されていた。
限られた時間に多くのことを解説されていたこともあってか,個人的には幾つかもっと詳しく解説していただきたいと思った。
ここで,そのうち4点を挙げ,私なりに説明してみたい。

1.道の駅などで販売されている農産物は残留農薬検査されていない
長村氏が,このような趣旨の発言をされていた。
多くの自治体の保健所では,農産物直売所も残留農薬検査対象施設としている。また,JA運営施設や民間運営の大規模施設の中には,自主検査を実施しているところもある。
もちろん,保健所が存在を把握していない施設は検査対象となっていないだろう。また,農産物直売所で販売している農産物からの基準値違反が度々報道されている。そのため,長村氏の懸念がまったく的外れとは言えないかもしれない。

2.有機農産物における農薬使用
パネルディスカッションにパネリストとして参加していたフリーアナウンサーの根本美緒氏が,「残留農薬が心配なので,無農薬や有機JASの農産物を選んでいる」といった趣旨の発言をしていた。
有機農産物制度(有機JAS,海外のオーガニック認証)は,農薬不使用を担保しない。実際には,認証農産物の多くが農薬不使用かもしれない。しかし,有機農産物マークや特別農産物マークの有無で農薬不使用は確認できない。
そもそも,有機JASや海外のオーガニック認証,特別農産物制度,エコファーマー制度は,食品の安全を担保する制度ではなく,農産物栽培における環境負荷低減技術導入を趣旨としている。
各制度で認証・認定された農産物が慣行栽培農産物より食品として安全であるとして販売することは,景品表示法における優良誤認と判断される恐れがあることから認められていない。実態として,そうした不適切な表示を行って販売している農業者や店舗はあるが,そうした行為を行っている農業者や店舗のコンプライアンスの低さを露呈していると判断してよい。

3.有機農業等で使用される,いわゆる疑義資材
有機農産物栽培では農薬登録されている資材をほとんど使えないため,農林水産省が農薬疑義資材と称している怪しげな資材を使用する農業者がいる。こうした資材の中には,農薬成分を含むものがあったり,安全性が疑われる資材が複数存在する。こうした資材を使うことで,農薬登録された資材を使って栽培された農産物より食品の安全性が低下している農産物があるのも事実だろう。
ちなみに,慣行栽培している農業者の中にも,宣伝文句を信じて農薬疑義資材を使用する人はいる。

4.食物アレルギーと「虫食い農産物」
近畿大学の森山達哉氏が以前発表されていたように,病虫害を受けた農産物は天然毒素を産生し,その天然毒素の幾つはヒトのアレルゲンとなることが知られている。また産生された天然毒素の中にはヒトに対して発がん作用を示す物質も知られている。そのため,「虫食い農産物」は食品の安全性の観点から,健康リスクが高いと判断してよい。


最後に。
私の近くに座っていた老夫婦が,「あの人たちはとんでもないことばかり言っている。業界の回し者だ。全然話にならない。」と話していたのが聞こえた。恐らく彼らは,食品添加物がいかに恐ろしいかという話を期待していたのだろう。科学的根拠を受け入れることができない彼らは,おそらく誰がどのように解説しても,陰謀論で片付けてしまうのだろう。
行動経済学解説書で指摘されている反応そのままであり,リスクコミュニケーションの難しさを改めて感じた1日でもあった。
posted by itoh at 18:14| Comment(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする