2009年05月24日

水田による環境破壊

FoodScienceの連載「小島正美記者の眼」2009年5月18日付け記事「勘違いな生物多様性破壊論に異議!」の中で,私が普段考えていることが書かれていた。

過去千年余りの歴史で日本列島の生物多様性を最も破壊したのは,実はこの美しい水田なのである。いろいろな生物がたくさん存在したであろう,森や雑木林,原野などを切り開いて,イネという単一の品種を延々と植えてきた。しかも,イネはれっきとした外来種である。

皮肉にも今,水田が各地で放棄され,休耕田が増えている。現在,埼玉県の面積に匹敵するくらいの耕作放棄地があるが,これは生物の側から見れば,生物多様性が復活する兆し,チャンスでもある。耕作放棄地をそのままにしておけば,やがて小さな昆虫(私の好きな甲虫も)も含め,いろいろな生物が増えていくだろう。

例えば,中国から連れてきたトキなどは,明らかに人間のエゴだ。
かつて日本にいたトキと中国のトキが同種だからといって,人間の都合で生息地を変えさせるのは,エゴ以外の何ものでもない。
あまり良い例えではないが,リンゴ品種の「ふじ」と「王林」は,分類学上はリンゴ属セイヨウリンゴという同一種だ。この2品種を完全に同じ植物を言う人はいないだろう。
トキが日本列島からいなくなった事実から多くを学び,今後に活かすことは必要である。しかしそれは,本来の生息地から遠く離れた日本列島に連れてきて,「トキの生活する姿」を強引に作り出すことではない。

また,トキや野鳥の餌場確保のため,冬場も水田に水を張っている様子を,さも素晴らしい事のように報道しているのを見かけるが,本当に鳥のために餌場を作りたいのであれば,水田を完全な湿地にすべきだろう。
小島氏の記事にもあるように,残念ながら現在の日本において,埼玉県の面積に匹敵する水田が耕作放棄地となっている。これらの耕作放棄地を鳥のための餌場に変えれば,わざわざ”鳥のために”冬期灌水する必要はなくなる。
冬期灌水を行う人たちは,それ以外の効果も期待して行っているようなので,その点を目的に冬期灌水するのであれば,それ自体は否定しない。
ただし,鳥の餌場や環境保全を名目にするのは止めていただきたい。

何を主張しても,水田を維持することが環境破壊の側面も持っている事実を変えることはできない。
なお,水田によって形成される新たな自然環境を否定するものではない。しかし,それをもって,水田がそれ以前の環境を破壊することは別の問題である。
posted by itoh at 18:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック