2009年07月17日

食品安全委員会の吉川教授参院不同意(追記)

民主党ウェブサイトから引用。
2009/06/02
食品安全委員会委員の同意人事案不同意について(談話)

民主党『次の内閣』ネクスト農林水産大臣
筒井 信隆

 民主党は、政府が提示した国会同意人事案のうち、食品安全委員会委員に、プリオン専門調査会の座長であった吉川泰弘氏を起用する案に不同意とした。

 吉川氏を座長とするプリオン専門調査会は、平成17年10月、米国・カナダについてのデータが「質・量ともに不明な点が多い」ことや両国のリスク管理措置の「遵守を前提に評価せざるを得なかった」ことを理由に、BSEリスクの「科学的同等性を評価することは困難と言わざるを得ない」と結論づけた。しかし、その一方で、日本向けの輸出プログラムが遵守される、すなわち、リスク管理措置が遵守されると仮定した上で、両国の牛肉と国産牛肉のリスクレベルの「差は非常に小さい」と報告した。

 民主党は、そもそも当該専門調査会が、こうした「科学的同等性の判断」について、@「科学的に評価することは困難」と結論づけ、明確な結論を放棄したこと、A「評価することは困難」と結論づけたにもかかわらず、両国のリスク管理措置が遵守されることを前提として、両国の牛肉と国産牛肉のリスクの「差は非常に小さい」と判断したことに重大な問題があると考えている。

 まず、@「科学的同等性の判断」は不可能としたことについては、リスク評価のためのデータが少なければ少ないなりに、その少なさを考慮してリスク評価を行い、また、データが少ないためにリスク推定値が大きくなるのであれば、更にデータを収集し、少しでも確実な結論を得る努力をする必要があったのであり、こうした努力を怠った当該専門調査会には、リスク評価に対する正しい理解が不足していたものとしか到底考えられない(※)。

 つぎに、A両国のリスク管理措置の「遵守を前提に評価せざるを得なかった」こと等を理由に、「科学的同等性の判断」を放棄しておきながら、リスク管理措置が遵守されるという仮定の上で、両国の牛肉と国産牛肉のリスクレベルの「差は非常に小さい」と判断したこと自体、当該専門調査会は科学的態度を欠いているものと言わざるをえない。

 以上のことから、吉川氏を座長とするプリオン専門調査会は、厳密な科学的観点からのみリスク評価を行ったと主張しながら、結局、リスク評価を放棄したに過ぎず、リスク評価のあるべき姿を理解していなかった点で、吉川氏はプリオン専門調査会の座長として適格性を欠いており、一刻も早く辞任すべきであったと考える。よって、吉川氏については、食品安全委員会委員として選任することについて、不同意とすることとしたところである。

(※)以上の考え方については、中西準子氏の以下の文献を参照。「英国、日本のBSE問題から考える 科学者に求められる責任とは何か」『中央公論』(2006.6)「主張 提言 討論の広場 米国産牛肉 輸入再開へ」『毎日新聞』(2005.11)

内容に対してコメントする前に,一言。
丸囲み数字といった,機種依存文字を使用するのは,止めていただきたい。民主党は,ウェブアクセシビリティという用語をご存知なのだろうか。

食品安全委員会委員任命について,参議院の議院運営委員会及び本議会で取り上げられたのは,2009年6月5日である。参議院ウェブサイトで確認したので,間違いない。また,衆議院の議院運営委員会及び本会議で審議されたのは,前日の2009年6月4日であることを,衆議院ウェブサイトで確認した。
この民主党ニュースでは,「不同意とした」と過去形で記されているので,国会での審議後に記されたものと思われる。しかし,この民主党ウェブサイトのニュースの日付が「2009/06/02」となっているが,どういう理由なのか。作為的に日付を指定しているのだろうか。

参議院議員運営委員会における民主党水岡俊一議員の反対意見によると,

食品安全委員会は、科学的評価は困難だとしながらも、輸入再開に事実上お墨付きを与える内容の答申をまとめました。

としている。この民主党のニュースでは,中西準子氏の論評を挙げて,

リスク評価を放棄したに過ぎず、リスク評価のあるべき姿を理解していなかった

ことを理由として,吉川氏の食品安全委員への選任に対して不同意としたと記している。
それならば何故国会の場で,きちんとその旨を意見表明しなかったのか。
各所で指摘・批判されているのは正にこの点であり,リスク評価機関である食品安全委員会に対して,民主党はリスク管理機関としての責任をも負わせており,民主党はリスク評価とリスク管理の違いをきちんと理解していないのではないか,といったものだ。
当初から本当に,この民主党のニュースの内容通りの趣旨で吉川氏の食品安全委員への選任に対して不同意したのであれば,各所での評価も違っていたかもしれない。しかし少なくとも,国会の議事録に残っている民主党水岡俊一議員の反対意見からは,この民主党のニュースの趣旨は読み取れない。

私は,2009年6月2日にこの民主党のニュースが民主党ウェブサイトに掲載されたのを確認しておらず,本日(2009年7月17日)に初めて知った。そのため,あくまで私の推測に過ぎないが,この民主党のニュースが民主党ウェブサイトに掲載された実際の日付は,2009年7月に入ってからのことではないのだろうか。各所で民主党への批判的意見が表明される中で,アリバイ的・後付的に掲載したのではないだろうか。
この民主党のニュースを,2009年6月2日に民主党ウェブサイトで確認された方がいたら,教えて欲しい。
posted by itoh at 20:40| Comment(5) | TrackBack(1) | 環境,食品,農業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 私は、貴殿のblogでこの民主党の意見をはじめて知りました。少なくとも6月30日まではなかったように思います。ただ、これに近い意見が、6月はじめから、食品安全委員会の周辺で噂されていたのは事実です。来週の私の雑感で取りあげます。
Posted by 中西準子 at 2009年07月18日 16:04
中西様,私の拙いblogをご覧いただき,大変恐縮しております。

民主党内部でどのような議論が成されていたのか,外からは分かりませんが,民主党ウェブサイトにUPされた趣旨が当初からのものであれば,参議院議院運営委員会での反対意見で,きちんと表明していれば,国会審議後の各所での批判的な意見は,あるいは違ったものになっていたのではと思っております。

いずれにしても,今回の民主党の対応については,少なくとも手続き上問題があった,といわれてもやむを得ないと思っております。

中西様の次回雑感,(毎回ではありますが)楽しみにしております。
Posted by tahata at 2009年07月19日 00:59
しまった。
中西氏が訪問されて居られたのですね。
ご本人にこのサイトの「紹介」メールを送ってしまいました。
要らぬお節介でした。(^_^;)
Posted by 我楽者 at 2009年07月19日 14:11
中西さんのHPから来ました。

民主党の該当の記事のIDが16424で、前後の16423、16425が両方とも7月1日の記事ですから、少なくともHPにアップされたのは7月1日でしょう。

Posted by キャス at 2009年07月26日 02:46
キャスさん >
情報,ありがとうございます。
キャスさん御指摘の点,松永和紀blogの匿名のコメントで知っていました。

私も民主党ウェブサイトで記事のURLをチェックしましたが,これだけ大きくNo.がズレている記事は,この「食品安全委員会委員の同意人事案不同意について(談話)」だけでした。
Posted by tahata at 2009年07月29日 20:14
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任せて良いのか?民主党!
Excerpt: 民主党をはじめとする野党が参議院で食品安全委員会の委員に東大の吉川教授が就任する
Weblog: アグリサイエンティストが行く
Tracked: 2009-07-19 23:25