2009年09月23日

食の安全保障

1991年4月創刊「griot(グリオ)」6ページ加藤周一「文学の効用」から引用。
しかしそれぞれの地域的概念を明瞭に定義できないということは,「第三地域」と「南北」の南側と最近独立した「旧植民地」が,少しずつずれながら重なり合う広大な地域に,今日あらわれている問題が明瞭でない,ということではない。「南北」の境界はあきらかでなくても,「南北」問題の存在はあきらかである。地球上には,食べすぎが主な関心事で,「低カロリー食」を工夫している地域があり,食糧不足のために人口のかなりの部分が毎年餓死している地域がある。その二つの地域の較差は狭まっているのではなく,現に拡大しつつあり,このままいつまでもつづけて行くのは不可能だということが,誰の眼にもあきらかである。

加藤周一氏はこの論考で,この食糧問題を始めとして,第三地域あるいは第三世界の置かれた状態を説明し,そうした課題を解決するための一助として,第三地域あるいは第三世界を文学を通して知ることの重要性を訴えている。
なお,「griot(グリオ)」は第三地域あるいは第三世界に関する論考や文学作品を紹介する雑誌であり,休刊となって久しい。

現在,18年前に加藤周一氏が述べたこの状態は,現在も未だ何も解決していない。
この問題は,「「低カロリー食」を工夫している地域」の一つである日本にとっても,決して他人事ではない。
この現実を無視して,自らの欲望のために,反収が減少し,そのために量を確保するために広大な耕地を必要とする有機農業なるものを推進することは,それ自体が殺人行為と言えないだろうか。
posted by itoh at 22:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>それ自体が殺人行為と言えないだろうか。

そうじゃないと思います。
そもそも高カロリー食の原因は肉食中心の生活です。肉を食べるためには飼料となる穀物を大量に消費しているのです。
肉食をやめ、穀物中心の食生活にすることで食糧不足の解消とは言わないまでも、かなりの問題解決につながります。

さらに有機農業は農薬や化学肥料の使用を減らすという意味で、もっと推進されてしかるべきものと考えます。
農薬の使いすぎは人体の健康への影響が懸念されますし、化学肥料は石油資源から生産されています。
これを有機農業に切り替えることで、石油資源に依存しない生産体制を敷くことが出来、しかも健康問題などにつながらない。そういう意味では決して殺人行為などではなく、よりいっそう推進していくべきでしょう。

私はそう思います。
Posted by よしだ(えるせっしょん) at 2009年09月25日 23:20
よしだ(えるせっしょん)さん,こんにちは。
コメントいただき,ありがとうございます。

以前のエントリーでも書いていますが,私は農薬使用については,あくまで使用基準の遵守を前提としています。使用基準の範囲内でしかも適期防除に努める限り,残留農薬の健康リスクは高くありません。
農薬被曝による農薬使用者の健康リスクについては別に考える必要はありますが,使用上の注意を遵守すれば,この点でも健康リスクは高くありません。
これらについて私は,多くの影響評価試験を受けて合格したものしか農薬登録できないことを根拠としています。

資源の枯渇問題については,よしだ(えるせっしょん)さんの御指摘通りで,資源の無駄遣いは避け,必要最小限の使用に留めるという意見に賛成です。しかし,農薬,特に殺菌剤については,予防防除が基本となることから,一部の消費者団体等が主張するように,治療剤を中心とした防除体系は現実的ではありません。
農薬使用量が劇的に減少できるような新たな農薬が開発されれば別ですが,GMOの使用を別とすれば,農薬や化学肥料の使用を極端に減らすことは難しいと思います。
以上のことから,現在の技術では,化石燃料に依存しない作物生産がメインストリームになることは,難しいと思います。
環境負荷についても考える必要がありますが,この点でも必要最小限の使用に留める必要があると考えます。しかし,以前のエントリーでも取り上げましたが,有機栽培が慣行栽培と比較して,無条件に環境負荷低減になるとはいえないことが,幾つかの研究事例から示されています。

なお,レスター・ブラウン等は,有機農業は単位面積あたりの生産量が少なく,世界で必要とされる食糧を生産するには,耕地が不足すると指摘しています。
世界規模の食糧需給量を考えた場合,有機農業の推進は経済的に貧しい人々を切り捨てかねないと考えます。

健康リスク面でも栄養価の面でも,有機農業の優位性は認められていません。環境負荷低減の面でも,無条件の優位性は認められていません。資源の枯渇問題を併せて考えたとしても,総合的に考えて,有機農業を否定こそしないものの,推進することはできません。
Posted by tahata at 2009年09月26日 00:09
コメントを書く
コチラをクリックしてください
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/128691684
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック