2010年01月11日

ポリフェノールは環境ホルモン

2010年1月に刊行された中西準子氏著書「食のリスク学 氾濫する「安全・安心」をよみとく視点」の中に,高橋久仁子氏との対談が収録されている(第2章)。
その中に,「ポリフェノールは環境ホルモン」(120-121ページ)という項があったので,ちょっとネットで調べてみた。

イソフラボンについてはある程度知っていたが,フラボノイドやリスベラトロールも内分泌かく乱作用が疑われる物質だったとは知らなかった。
いずれにしても,食品から摂取される量であれば,「ばっかり食」をしない限り,直ちに健康を害することはないようだが,サプリメントなどの濃縮品を摂取するのは,医師の指示がない限り推奨できないということ。

農水省や地方自治体の農業部局では,農産物の消費拡大のため,ブルーベリーやりんご,ぶどうといった果実の機能性としてポリフェノールを積極的にPRに使っているが,その行為は,内分泌かく乱作用が疑われる物質(いわゆる「環境ホルモン」)の摂取を推奨することでもある。
そもそも,ポリフェノールが分泌かく乱作用が疑われる物質か否かの前に,こうしたPRは既にフードファディズムである。


化学物質問題市民研究会内分泌かく乱化学物質
疾病への潜在的な原因として探査(2005年7月20日アメリカ医師会機関紙(JAMA)掲載記事紹介)

研究者が内分泌かく乱物質の研究を行うための興味を抱く物質の全てが人工物質であるというわけではない。興味深い植物成分のひとつ、ゲニステインは自然界の植物エストロゲンであり、大豆製品中の主要なイソフラボン(訳注:ポリフェノールと総称される植物成分のフラボノイド類に属しエストロゲン様作用を持つ物質)である。実際、大豆の調合乳を飲む乳幼児は発達曝露のリスクの可能性について赤信号を出すに十分な高いレベルにある。

 生殖の生物学(Biology of Reproduction)のオンライン版2005年6月1日で発表された動物実験研究で、研究者はゲニステインを新生児に1日当り 0.5、 5、 50 mg/kgを、それぞれ投与した。出生後の最初の5日間、最も高い容量のゲニステインを投与された動物は、18月齢での子宮腫瘍の発症率が35%であり、卵巣中の形態的な変化が見られた(多卵母細胞小胞を含む)。

 ”これらの動物は早期の生殖老化をともなった。その卵巣は奇形であり、完全には機能しなかった”とニューボールドは述べた。

 ある報告書によれば、大豆の調合乳中のイソフラボンへのヒト乳幼児の日々の曝露は、成人が大豆食品を摂取することでホルモン影響が生ずる用量に比べて(体重ベースでは)6~11倍高い(Setchell et al. Lancet. 1997;350:23-27)。しかし、現在、研究者らはゲニステインについての動物実験の結果がヒトに対してどのような意味を持つのかわからないとして、”我々は注意しなくてはならないと私は思う。人間は多くのエストロゲン又は内分泌かく乱物質に曝露しており、これらの曝露を可能な限り減らすことが重要である”とニューボールドは述べた。


もなみ9歳Fモンスター名ではありませんー(2005年12月23日)
 つまり、アンタゴニストはホルモンによる生理活性作用を阻害してしまう物質というわけー。
 そのため、アンタゴニストには環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の疑いがあり、実際、リスベラトロールは経済産業省様のドキュメントでも環境ホルモンの疑いのある物質として上げられていますー。
 こう書くと、物凄く体に悪い物質に聞こえますよねー。
 でも、実際は抗生物質にしてもアンタゴニストにしても絶対に悪というわけではないのですよー。
 例えばヒスタミンというのはアレルギーに関わるホルモンなのですケド、ヒスタミンの受容体にアンタゴニストがくっついてしまえば、アレルギーの症状を抑えることができますー。
 こういうアンタゴニストを抗ヒスタミン剤と呼んで使ってるわけですねー。
 リスベラトロールは抗生物質でアンタゴニストですケド、必ずしも体に悪いとは限らない物質ということを理解して頂いたところで、最後にリスベラトロールが多量に含まれている食品を教えますねー。
 それは、ブドウの皮ですー。
 だってリスベラトロールって赤ワインのポリフェノールのことですからー。


財団法人日本公衆衛生協会食品・薬品 安全性研究ニュース 第20号
「生体試料中の植物性エストロゲンおよびポリフェノールの測定」
Analysis of phytoestrogens and polyphenols in plasma, tissue, and urine using
HPLC with coulometric array detection
 Gamache PH, Acworth IN (ESA 株式会社, Chelmsford, MA, USA)
Proceedings of the Society for Experimental Biology and Medicine
 217 : 274-280 (1998)
Key words : 植物性エストロゲン/ポリフェノール/ラット血漿・子宮/ヒト尿/高速液体クロマトグラフィー/電気化学検出器

 内分泌機能に影響する植物由来の化学物質は, 種々の不都合な作用以外にも様々な効用のあることから注目されてきている. 特に, イソフラボノイド, リグナン, クメスタンなどの植物性エストロゲンはそれらの毒性が懸念されているが, ある種のホルモン依存性癌の発生を防ぐ働きもあると言われている.これらの化合物は動物(ヒトも含む)に経口摂取され, 体内で代謝を受けるが, 代謝物を含めた植物性エストロゲンは, エストロゲン受容体, ある種の酵素の活性, 通常の吸収, 代謝, 分布および内在性エストロゲンの生体高分子結合性に影響を及ぼし, さらに抗酸化作用を示すが, これらの現れ方は, 性や発生段階あるいは曝露量や期間によって異なる.
 植物性エストロゲンは通常グリコシド抱合体として存在し, 動物体内の細胞内細菌叢により加水分解されアグリコンとなり, さらに代謝されて体内に吸収され一部は再び抱合されるが, ヒトでは同じ食事をしていても植物性エストロゲンの尿中排泄に著明な個体差がある (equol では 1527 倍の差がある) ことが報告されている.


財団法人日本公衆衛生協会食品・薬品 安全性研究ニュース 第33号
「フラボノイドの過剰摂取の健康への影響」
Potential health impacts of excessive flavonoid intake Skibola CF, Smith MT (California 大学 Berkelay 校 公衆衛生学部 環境保健科学科,Berkeley, CA, USA) Free Radical Biology & Medicine 29 : 375-383 (2000)
Key Words : フラボノイド/毒性/変異原性/ケルセチン/フリーラジカル

 植物フラボノイドには抗酸化作用や細胞増殖抑制作用があることから,天然の癌抑制物質と考える研究者がおり,フラボノイド含有量の多い食品を「毒性のない薬」と誇張した宣伝を行って提供する業者も現れ,まだ臨床試験で確認されていないのに,健康志向の強い人たちの間で使用量が著増しているが,「少量で良いものは大量ではもっと良い」という誤解がある.フラボノイドには実験的には変異原性やほかの遺伝毒性のあることが知られている.フラボノイド豊富な食品は健康に良いという証拠は十分にあるが,健康障害を起こす可能性も考えられる.
 フラボノイドの含有量の多い食品としては,各種の果物,野菜,穀物,茶,ビール,赤ワイン等があげられ,米国人の総フラボノイド摂取量は1日 500~1000 mg とされるが,健康食品としてのフラボノイドの摂取量は1日数グラムに及ぶのである.
 フラボノイドには flavonols, proanthocyanidins, isoflavonoids, flavones, flavanones 等各種のものがある.主要なものの知見を要約する.ケルセチンは flavonol に属し,タマネギ,リンゴ,キャベツ(ケール),赤ワインや茶に含まれている.通常の摂取量は1日 4~68 mg とされるが,日本人は茶を飲むためかもっと多い.ケルセチンの生物作用には (in vitro 実験で) 抗ウイルス,抗菌,抗炎症,抗細胞増殖が報告されている.赤ワインや茶には,カテキン類も含まれているが,抗細胞増殖作用,抗酸化作用が認められている.Isoflavonides は「植物エストロゲン」と言われ,弱いエストロゲン活性を有する.ゲニステインとダイゼリンは大豆とその製品(豆腐,味噌,豆乳)に含まれ,日本人等アジア人ではきわめて摂取量が多い.大豆 isoflavons の摂取量は西欧人では 1~3 mg であるが,アジア人では 20~240 mg とされる.
 ケルセチン類は以前から変異原性を有することが問題にされていた.これらはミトコンドリア呼吸の調節を破壊して過酸化物の生成を起こし,DNA 傷害,突然変異の誘発に至る.このミトコンドリア酵素の阻害が一方では抗腫瘍作用の機序と考えられる.ゲニステインは in vitro で topoisomerase , 活性を抑制する,蛋白のチロジン燐酸化を抑制する,培養癌細胞の分化を誘発する等の作用が認められている.
 多数の疫学的調査から,野菜,果物,大豆製品の摂取量が多いと,心臓病や癌(乳腺,前立腺,肺,大腸,胃)のリスクが低いと言われている.従って,アジア人や菜食主義者ではこれらのリスクは低い.彼らの摂取量程度までならば健康障害を生じることはないように思える.現在,ヒトに有害な影響を生じる用量を確認した研究はなく,長期摂取の影響を調べたものもないが,通常の食生活では食物中のフラボノイドが変異原性や遺伝毒性を発揮することはないと思われる.しかし,健康食品 (dietary supplements) として菜食主義者の摂取量より10倍も20倍も多く摂取するとなると問題であり,規制されないままでは,有害な影響が起こることが懸念される.


(独)国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報ビタミンP(ヘスペリジン、シトリン、ケルセチンなどのフラボノイド)
(総合評価 安全性の項)
・ヘスペリジンは短期間ならば適切に用いれば安全性が示唆されている。3ヶ月までは安全と思われるが、それ以上の摂取の安全性は充分なデータがない。ヘスペリジンの経口摂取の副作用としては頭痛と消化器系のものが知られており、腹痛、下痢、胃炎などがある。
・ケルセチンは、経口摂取で最大500mg×2回/日を1ヶ月までならば安全性が示唆されている。ケルセチンの経口摂取での副作用としては、頭痛、手足のしびれがある。
・ヘスペリジン、ケルセチンとも妊娠中、授乳中の安全性についてのデータは充分にないので、使用を避けること。

posted by itoh at 11:13| Comment(1) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ワインも良くないんだね??
イソフラボンは以前聞いた話では(大豆ホルモンは女性ホルモン)なので男性が摂取しすぎると女性化するとか子種が減るとか聞きました。とはいえ昔から食べているものなので危機感を持つ必要もないとは思いますが?納豆はめったに食べないけど豆腐はたべるし醤油も大豆だし~
Posted by tt at 2017年08月08日 22:13
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