2010年10月27日

ビタミンで発がん

(2010年10月28日 加筆・修正,参考リンク追加)
まとめる機会があったので,upする。

畝山智香子氏著「ほんとうの「食の安全」を考える ゼロリスクという幻想」などに,ビタミン類の過剰摂取に関する情報がある。

例えば,ビタミンCに関するものでは,
一般的にはビタミンCは風邪予防の効果があるとされている,現在の科学的知見では否定されている。
一方,過剰摂取した場合,腎臓結石の副作用があることが知られている。

ベータカロテンに関するものでは,フィンランドやアメリカで行われた,大規模臨床試験がよく紹介される。
フィンランドの事例(ATBC試験)
1994 年に報告。
50-69歳の喫煙男性(肺がんになる可能性が高い)29,133人を次のように分けて毎日服用,5〜8年継続した試験。
 ・ ベータカロテン20mg(7,282人)
 ・ アルファトコフェロール(ビタミンE)E50mg(7,286人)
 ・ ベータカロテン 20mg+アルファトコフェロール(ビタミンE)50mg(7,278人)
 ・ 偽薬(7,287人)
【結果】
ベータカロテンを服用した群で,肺がんの発生率や死亡率が統計学的に有意に高かった。
ベータカロテン服用群は非服用群と比較して,肺がんの発生率が16%増加,死亡率が8%が増加。
ビタミンE服用群は非服用群と比較して,肺がんの発生率等に違いはなかった。

アメリカの事例(CARET試験)
1985年に開始され,1996年に報告(中間報告)。
肺がんになる確率が大きいと言われている喫煙者とアスベスト(石綿)に曝露したことのある18,314人を次のように分けて毎日服用。
 ・ ベータカロチン30mg+レチノール(ビタミンA)25,000IU
 ・ 偽薬服用群
【結果】
肺がんの発生率や肺がん死亡率が,統計学的に有意に高かった。
ベータカロテン+レチノール群は非服用群と比較して,肺がんの発生率が28%増加,死亡率が17%増加。
中間結果でこの結果が得られ,本試験の継続は危険性があるとして,試験が予定より21ヶ月早く打ち切られた。

畝山氏の著書によれば,ほかの幾つかの臨床試験でも,同様の結果が確認されているらしい。
ベータカロテンやビタミンAの過剰摂取と発がんの因果関係については,勉強不足でまだ知らないので,御存知の方がいたら御教授願いたい。

同じビタミンでも,天然物と合成物で効果が異なるとする立場もある。
例えば,ベータカロテンにはシス型とトランス型の光学異性体が存在し,合成物はオールトランス型だが,天然物はトランス型とシス型の混合である。

ビタミンAの摂取量は年齢によって異なるが,厚生労働省の第6次改定日本人の栄養所要量(2005年)によると,概ね次のとおり。
 所要量:ビタミンA(レチノール当量)で300〜600mcg(1,000〜2,000IU)
 許容上限摂取量ビタミンA(レチノール当量)で1,200〜1,500mcg(4,000〜5,0000IU)
レチノール1mcg=ベータカロテン12mcg。
(mcg:マイクログラム)

五訂増補日本食品標準成分表によると,いずれの食品も100g当たりの成分量で,
 レチノール
  ゆで卵:130mcg(Lパックで1個64g〜70g未満)
  鶏むね生肉(皮つき):72mcg
  牛バラ生肉(脂身つき):24mcg
 ベターカロテン
  焼き海苔:25,000mcg(レチノール当量で約2,083mcg)
  ゆでたニンジン(根,皮むき):6,900mcg(レチノール当量で575mcg)
  ゆでたモロヘイヤ:6,600mcg(レチノール当量で550mcg)
  ゆでたホウレンソウ:5,400mcg(レチノール当量で450mcg)

以上のことから,通常の食事で許容上限摂取量を超えることはそうないことがわかるだろう。
仮にある日に許容上限摂取量を超える量を食事から摂取したとしても,毎日同じメニューを摂取することは現実的にはないだろうから,あまり神経質になることはない。
しかし,サプリメントや濃縮品(粉末やエキスなど)を常用すると,許容上限摂取量を常に超える可能性がある。
サプリメントは一応成分表が付いているので摂取量の加減は可能だと思われるが,濃縮品(粉末やエキスなど)はロット毎のバラツキも大きいと思われ,リスクが高くなるだろう。

畝山氏は著書で,次のように述べている。
ここに示した試験以外にもたくさんの試験が行われました。そのほとんどすべてにおいて,ビタミンサプリメントによるがん予防効果は期待できないという結果であったため,もはやこれ以上の臨床試験を行うことはよほど革新的な事実でも明らかにならない限り,倫理的に許されないだろうというところまできています。つまり,科学的には,抗酸化ビタミンサプリメントによるがん予防という夢は,ほぼ完全に否定されているのです。

ビタミン類に効果がないのであれば,ビタミンよりさらに人体での挙動が明確でない各種「抗酸化物質」のサプリメントが有効である可能性はほとんどないと予想されます。


抗酸化物質のひとつとして有名なポリフェノールについては,以前取り上げたことがある。

健康の基本は食生活の場合,バランスの取れた食事である。
健康に有効な成分が含まれるからと言って,”ばっかり食”を続けることは,かえって健康リスクを増大させる。

<参考リンク>
肺癌リスクのある人にβ-カロテンサプリメントは有害と確認される(海外癌医療情報リファレンス)
βカロチンのサプリメントは、肺癌リスクの高い人には有害と確認される(要約)(海外癌医療情報リファレンス)
がんの予防その2(穀物食の威力 〜がんの予防〜)
第1回健康情報を科学的に読み解く - サプリメントの科学的評価とは?
飲酒する喫煙者にβカロチンは逆効果
posted by itoh at 20:51| Comment(4) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも拝読しています。
今回のエントリーはブログで紹介させていただきました。

http://yukijuku.blogspot.com/2010/10/blog-post_28.html
Posted by mishimahiroshi at 2010年10月28日 06:42
mishimahiroshiさん,こんにちは。
本blogを紹介いただき,ありがとうございます。
Posted by tahata at 2010年10月28日 20:53
医学部の授業で、ビタミンAの催奇形性を学びました。
確かに、動物実験ではビタミンAを過量投与すると奇形の仔が生れる率があがります。普通の食事では起きない量のようですが、サプリメントだと分かりません。
Posted by 松井 at 2010年11月06日 09:05
松井さん,こんにちは。

ビタミンAに限らず,天然毒素を含めた食品に含まれる成分は,長い食習慣の中で得られた調理法で適量摂取しているうちは概ね問題ないと思います。

しかし,サプリメントや特定の成分を添加した食品,濃縮食品,粉末食品などを日常的に利用している人にとっては,健康リスクを大きくする問題だと思っています。

食品は,まず風味や食味を楽しみたいものです。
バラエティに富んだ食品を適度に楽しく食べていれば,栄養素欠乏を心配する必要はないと思っています。
Posted by tahata at 2010年11月06日 12:26
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