2011年06月03日

清浄野菜

ヨーロッパで起こっている集団食中毒についてネット検索しているうちに,「清浄野菜」という用語を知った。
現在では,各所で都合の良い解釈,例えば「無農薬野菜,水耕栽培による野菜」という解釈をする場合もあるようだが,本来は,
三 清浄野菜の定義
 清浄野菜とは左に掲げる条件下に栽培され、かつ、腸内寄生虫卵(仔虫を含む。以下同じ。)及び経口伝染病病原菌が付着しているおそれのない野菜類(果菜類及びいちごを含む。以下同じ。)をいうものとする。
1 栽培する耕地は、過去一箇年以上前から衛生的に未処理の屎尿を使用せず、かつ、隣接地又は流水その他により、衛生的に汚染の虞がない等、清浄野菜の栽培上支障がないと認められる処であること。
2 直接栽培に施用する肥料は堆肥、化学肥料、粕類等によることを原則とし、屎尿については、衛生的に未処理のものを絶対に使用しないこと。
3 屎尿については、堆肥の材料として用い、高温醗酵等により衛生的に完全に処理された場合、又は当初から分離集取せられた尿の場合に限り、その施用を認めること。ただし、この場合の堆肥等もなるべく前作又はその基肥としてのみ施用するものとし、その施用量も可及的に少量に止めること。
昭和30年3月28日衛発第205号厚生省公衆衛生・農林省農業改良局長連名通知「清浄野菜普及要綱」)

という公の定義がある。
私は気づかなかったのだが,この名残が市場野菜の包装フィルムにあるらしい。
国の通知文にもあるように,人のし尿(屎尿)を基にした肥料を使った農産物が病気蔓延の原因となっており,この対策として「清浄野菜普及要綱」が定められた。要綱制定後,都道府県と連携して清浄野菜を推進していったようだが,一朝一夕ではいかなかったらしい。この辺りの状況は,大阪学芸大学の原田昇氏のリポートが参考となる。このリポートは1965年(昭和40年)に公表されているが,この頃はまだ農産物の衛生状態が問題となっていたことを窺わせる。生野菜など,農産物の生食が安心して行えるようになったのは,つい最近のことのようだ。
このリポートでは,清浄野菜が普及しない一因として,清浄野菜とそれ以外とで価格差がないため,生産者が清浄野菜への生産意欲を示さないためと指摘している。また,清浄野菜の普及の一助として,販売宣伝方法を指摘している。こうした状況は,現在の農業の販売戦略(付加価値を付けるため,各種認証・認定制度を活用するなど)とも共通点があるように感じるのは,私だけだろうか。

日本では,いつ頃から生野菜が食べられるようになったのか。
Doleキッコーマンのウェブサイト,Wikipedia及び先の原田昇氏のリポートによると,ウリやスイカなど極一部を除けば,明治時代以降に欧米からサラダなど野菜の生食が導入されて以降らしく,一般に普及したのは戦後以降とのこと。「清浄野菜普及要綱」の制定が昭和30年なので,太平洋戦争敗戦後10年近くで一般にも広く普及し始めていたようだ。「野菜の生食」は,豊かさの表れなのかもしれない。

最後に,前述の原田昇氏のリポートから引用したい。
ともあれ清浄野菜の現状はかくの如くで普及に努めている生食野菜でさえ必ずしも安心することは出来ないので,その普及には一層の努力が必要である。今実施されている生食野菜だけでなく我々が毎日使用する普通の野菜類も早く清浄なものにしたいものだ。最近野菜の虫卵検査のデーターを見ることが出来ないので,他の野菜が必ず汚染されたものと断定することは出来ないが,清浄の保証がないことは確かであり,野菜に付着している蛔虫卵は,我々が毎日食べている漬物でも死滅しないということは常識でまたこの頃宣伝されている中性洗剤による洗滌でも完全な効果は期待できないからである。

posted by itoh at 21:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする
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