2011年06月03日

有機物・有機質肥料と食中毒


今週発行のFOOCOM.NETのメールマガジン(有料会員に対して発行)に,食品安全委員会が依頼して調査された「肥料中の有害物質の挙動に関する文献及び肥料の安全性に関する国際的な制度の調査報告書(平成18年3月)」(資料添付ファイルの調査報告書は,22.4MBとファイルサイズが大きいので注意)が紹介されていた。400ページを超える本リポートでは,肥料(堆肥なども含む)中に含まれる(可能性のある)重金属類や病原性微生物等について取り上げており,安全化対策や海外リスク管理が紹介されている。
本リポートから,堆肥等施用に関連する部分を幾つか引用する。
西山ら(1991)は,2歳の男児から駆虫によって13匹の回虫を確認した。その感染経路に関しては,回虫卵陽性者の人糞を用いて家庭菜園で栽培した野菜を離乳食の時から食べさせていたことが判明し,自家菜園の野菜が感染源と推定された。(312ページ)

91匹もの回虫により腸閉塞を起こした3歳男児の例(押川ら,1992),<略>人糞尿を使用した自家菜園野菜や有機栽培野菜の多食が原因であると推定されている。(312ページ)

藤田(1997b)は,有機栽培野菜の宅配を利用している主婦の回虫寄生症例を示し,家族は寄生虫卵陰性であったことから家族からの感染の可能性は低く,有機栽培野菜が感染源であろうと推定している。(312ページ)

我が国の食中毒の原因食品を図5.2.1に示す(2002年度厚生労働省集計)。<略>キノコを除く野菜類とその加工品による食中毒事例は全体の約1.5%と低率である。しかし,食中毒の原因物質全体のうち原因不明及び「その他」,及び複合調理食品が合わせて約79%を占めており,その中で野菜関連の事例がどれだけ含まれているかは不明であり,原因食品が特定されている事例(食中毒全体の20.8%)の中では,キノコを除く野菜類とその加工品は7.2%を占めている。従って,野菜類による食中毒は,決して低い比率ではないと推定される。(323-ページ)

堆肥を施用して生産した農産物が,病原菌に汚染されているかどうか,その調査研究例はきわめて少ない。<略>我が国では,上田・桑原(2002)の先駆的な研究により,ようやくその一端が開かれた。(表5.2.12)有機栽培野菜(圃場で確認できるもの:葉菜類と根菜類)や市販野菜,及び有機栽培圃場の土壌や市販合成有機肥料中の大腸菌群等について調査した。<略>153点の資料のうち98%から大腸菌群が検出され,これは市販の一般野菜の56%と比べて高い。しかし糞便性大腸菌は有機野菜からも一般市販野菜からも検出されず,大腸菌群の分離株から,病原性のある大腸菌は検出されなかった。また,有機栽培圃場の土壌101点からは大腸菌群が100%検出され,糞便性大腸菌群も7%から検出されており,堆肥施用の影響がうかがえる。市販の合成有機肥料19点からは大腸菌群は検出されなかったが,それらの原料となる有機肥料原料からは大腸菌群が64%,糞便性大腸菌群が36%の高率で検出された。(336ページ)

上記のような大腸菌O157の感染サイクルを絶ち,安全な農作物を確保するには,生産,流通,消費至る一連の過程において,生産者も消費者もともに衛生に関する正確な知識を持ち,それぞれの責任を果たすことが重要である。すなわち,野菜や果実の生産から消費に至る過程で病原菌の汚染源となるもの(表5.2.17)について注意を払い,特に生産者にあっては適正農業規範(GAP)をよく理解して,適切な衛生管理を行う必要がある。(343ページ)

(強調はtahataによる)
posted by itoh at 21:47| Comment(0) | TrackBack(1) | 環境,食品,農業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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[雑記]リスク?
Excerpt:  がんさんのブログ「アグリサイエンティストが行く」で質問をさせていただき丁寧にお答えを戴きました。 >腸管出血性大腸菌の堆肥から植物体への移行について >http://gan-jiro.cocolo..
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