2012年05月02日

震災復興をダシにしたと思われる農水省事業

食品安全情報blog2012年5月1日レビューから引用。
農林水産省「食」に関する将来ビジョン検討本部

http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_vision/index.html

「有識者」とやらが無茶苦茶なことを言っている

たとえば

http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_vision/pdf/100908_summary.pdf

農林水産省が食を掲げ、医療まで手を伸ばす

漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生

食育に関して問題を抱えている母親や中学生

長寿立国となった背景に日本独特の食文化がある。たいして動物性タンパクを取らずとも、米と大豆で健康な体を作ってきたという経験則

(フランスは)食料自給率100%でなければ独立国ではないと

http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_vision/pdf/101215_summary.pdf

基本的に食べものが何であるかの記述がない。せっかく作った小麦も米も糠と胚芽を捨てて「かす」を食べている状態。それで健康になろうなんて間違っている。

総合医療、統合医療、融合医療の根っこの部分を、農業が受け持ち、基本的な研究開発を進めていけばよい。農水省がしっかりやれば、医療費を3分の1に減らすことも可能だと思う。

食養生・漢方を含む統合医療

1977 年のアメリカのフードピラミッド(これいわゆる「マクガバン報告」と呼ばれて一部でやたら引用されているもの。今のアメリカのフードガイドではなく1977年を持ち出すところがなんというか)

今の親は子育てを知らない

文科省は学校を通して母親を教育して欲しい

(これだけとんでもない意見を集めて作ったビジョン(案)が比較的まともなのは事務方の努力だとは思うけれど。)

このエントリーに書いた私のコメントのとおり,東日本大震災をダシにしたと思われる事業が,平成23年度から最長平成29年度までの予定で実施されている。事業概要等については,農林水産省農林水産技術会議のウェブサイトに掲載されている。該当する事業は,「食料生産基地再生のための先端技術展開事業」の中の「大規模施設園芸・露地園芸技術の実証研究」の中の「生体調節機能成分を活用した野菜等の生産の技術実証」。
平成23年度に行われた第1回検討会資料(pdfファイル)から,事業概要を引用する。
提案者名:(独)農研機構・食品総合研究所 日野明寛

提案事項:生体調節機能成分を活用した野菜等の生産の技術実証

提案内容:
超高齢社会を迎えたわが国では、メタボリックシンドローム等に起因する生活習慣病や視覚障害等、加齢に伴う疾患者数が増加しており、医療費の増大、あるいは罹患者の生活の質(Quality of Life;QOL)の低下が深刻な問題となっている。これらの予防・軽減には、野菜・果物類などの積極的摂取が有効であることが疫学的研究などにより認められているが、実際には国の食事摂取基準が満たされておらず問題となっている。そこで、これら疾患の予防あるいは症状軽減などに有効であることが報告されているルテイン、オスモチン、抗酸化物質などの機能性成分等が多く含まれる農産物の生産技術の開発と、宮城県における実証を進める。また,医学分野との連携により機能性成分等の有効性の評価技術の開発と作用メカニズムの解析を行い、事業で生産された機能性成分等が多く含まれる農産物の有効性の実証を進める。さらに、これらの健康機能性と農産物生産に関する成分を農業・食品産業界で有効に活用するためのプラットホームの構築を行う。

期待される効果:
農産物・食品から機能性成分等を摂取することの有効性のエビデンスが強化され、これらの成果をもとに宮城県の農業・食品産業において活用できるデータベースの構築など科学的根拠をもとにした健康機能性の優れた農産物・食品の利用による健康寿命延伸のための社会的ネットワーク構築と、疾病予防に有効な食生活の実現による超高齢社会のQOLの向上が期待される。

平成24年度公募研究課題(案)(pdfファイル)によると,「大規模施設園芸・露地園芸技術の実証研究」全体での平成24年度事業費限度額として,150百万円~200百万円が予定されている。「生体調節機能成分を活用した野菜等の生産の技術実証」のほかに2事業あって3事業合計の事業費なので,「生体調節機能成分を活用した野菜等の生産の技術実証」の事業費がどの程度かは不明だが,公金がこのような事業に使われるのは事実だ。
なぜこのような事業が東日本大震災復興関連の事業となっているのか,引用した事業概要では分かりにくい。事業提案者の意図によると,付加価値の付いた農産物を被災地で栽培することによって有利な農産物販売が可能となり,それが被災地における事業拡大や収益拡大に繋がるなど,震災復興の一助となると考えているらしい。
そもそも「ルテイン、オスモチン、抗酸化物質などの機能性成分等が多く含まれる農産物の生産技術の開発」が,「疾病予防に有効な食生活の実現による超高齢社会のQOLの向上」に繋がるのか甚だ疑問だ。
抗酸化物質については,畝山智香子氏著「本当の「食の安全」を考える ゼロリスクという幻想」156ページにおいて,
ビタミン類に効果がないのであれば,ビタミンよりもさらに人体での挙動が明確でない各種「抗酸化物質」のサプリメントが有効である可能性はほとんどないと予想されます。もちろん学問の世界では今後も探究が続くのですが,一般の人に対しては,病気予防の目的で現時点で影響がよくわからないものをわざわざ高いお金を出して摂る必要はない,と言えます。

と述べられている。
この点だけで,「疾病予防に有効な食生活の実現による超高齢社会のQOLの向上」が,「科学的根拠」に乏しいと言えるだろう。
仮に「機能性成分等が多く含まれる農産物の生産技術の開発」が実現できたとして,その生産技術が被災地限定のものとなる「科学的根拠」はどこにあるのだろうか。
また,事業目標の一つとして,「機能性成分等が多く含まれる農産物」を「健康食品」のような「付加価値販売」することを考えているようだが,そのような販売方法は,景品表示法,食品衛生法,JAS法,薬事法等に抵触する恐れがある。この点を事前に十分検討した上で,事業目標の一つとしているのだろうか。

どのように考えても私には,「生体調節機能成分を活用した野菜等の生産の技術実証」は,東日本大震災をダシにした予算取り事業としか思えない。

<2012年5月3日追記>
食品安全情報blogのコメント欄に,
共同研究機関に,農水省関連独法を始め東大&慶応大医学部も関わっているとか。

と書いたが,平成24年度食料生産地域再生のための先端技術展開事業の委託先予定一覧(pdfファイル)を確認したところ,両大学とも載っていなかった。
私の勘違いのようだった。訂正してお詫びする。
posted by itoh at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする
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