2013年07月15日

東日本大震災復興と農産物等の健康機能性

食品安全情報blog2012年4月6日レビューから引用。
ACSHは,米国保健科学協議会の略称
・ 酸化せよ!

ACSH

Oxidize this!

April 4, 2012

http://www.acsh.org/factsfears/newsid.3519/news_detail.asp

 10年以上にわたってアメリカの消費者は何十もの抗酸化物質の健康影響とやらを賞賛する宣伝に曝されてきた。典型的な宣伝文句はこれらの化合物ががんの原因となるかもしれないフリーラジカルから守る、細胞傷害を予防して加齢を遅らせる、といったものである。ACSHのRuth Kava博士が言うように「これらの魔法の化合物の多くはビタミン類なので、人々はたとえそれに抗酸化物質としての効果が無くても摂りすぎによる害はないだろうと見なしている。」

 しかし多くの人々が信じているのとは違って、抗酸化物質の健康影響は科学的研究によりきちんと検証されていない。

 今年初めのIFTの健康会議で、平均的消費者は抗酸化物物質とは何でどんな働きがあるのかほとんど知らないことが示唆された。会議に参加した8人に抗酸化物質が何をしているのかを質問したところ回答欄はほとんど空白だった。一人は抗酸化物質がばい菌を殺すとすら思っていた(注:逆。ラジカルのほうが菌を殺すのに必要)。ACSHのJosh Bloom博士は「消費者のうちフリーラジカルが何かわかっていてそれから守ろうとしているヒトはほとんどいないのだろう。そして多くのフリーラジカルが人体にとって必須の生化学反応に必要であることも知らないのだろう。抗酸化物質の最も重要な役割は、実は、製品を販売するためのマーケティングツールとして、である」

 コロンビア大学医学センターの医療栄養学部門長Dr. David Seresは「ビタミンや栄養素だから有害ではないという思いこみは真実にはほど遠い。適切な無作為試験で調べると多くの抗酸化物質は実際には役に立つより害の方が大きいことが証明されている。例えばビタミンEサプリメントを摂ると前立腺がんになりやすく、ビタミンCは喫煙者の肺がん増加と関連する。現在の法律は栄養学が未開拓時代の時にできたもので、これらの物質はもっと適切に規制されるべきだ。」

食品安全情報blog2012年6月18日レビューから引用。
■[USDA]特定食品の酸素ラジカル吸収能(ORAC)、第2 版(2010)Add Stary-wood

Oxygen Radical Absorbance Capacity (ORAC) of Selected Foods, Release 2 (2010)

Last Modified: 05/16/2012

http://www.ars.usda.gov/services/docs.htm?docid=15866

 最近USDAの栄養データラボ(NDL)は、ポリフェノールを含む特定の生理活性化合物のヒト健康影響に抗酸化能を示す指標が関係ないことを示す根拠が増加したため、USDAのORACデータベースをNDLのウェブサイトから取り下げた。

 理論的にがんや冠動脈疾患、アルツハイマー病や糖尿病などの各種慢性疾患を予防したり改善したりするのに役立つと考えられている生理活性化合物がたくさんある。しかしながらその代謝経路が完全に理解されたわけではなく、まだ不明ながら抗酸化によらないメカニズムも関与している可能性がある。ORAC値は食品やサプリメント業者によって製品の宣伝に常に誤用されてきた。

 食品の抗酸化能を測定する試みとしてORACを含む多数の化学分析技術が開発されてきた。ORACはある化合物によるペルオキシラジカル誘発性酸化阻害の程度を調べるものである。これはTolorox相当量としての量を測定し、阻害時間と阻害の程度を含む。ORACのいくつかの新しい方法では別の物質を使っていて各種測定法による結果は比較できない。さらに第二鉄イオン還元抗酸化力(FRAP)やTrolox相当抗酸化能(TEAC)測定法などの他の測定方法では異なるラジカルや酸化物を利用しており直接比較できない様々な値を出す。

 ポリフェノールをたくさん含む食品の健康への良い影響が抗酸化能によるという根拠はない。In vitroで測定される食品の抗酸化能はin vivo(ヒト)には適用できず、食事中抗酸化物質の影響を調べたヒト臨床試験の結果は一貫しない。我々は今や、食品の抗酸化分子には幅広い機能がありその多くがフリーラジカルの吸収能力とは関係ないことを知っている。

 従ってこのウェブサイトで提供していたORACテーブルは取り下げた。

 (抗酸化力がどうこうという宣伝は根拠がない、とEFSAに続き米国も公式に認めた。さて日本はどうするかな。)

食品安全情報blog2012年9月6日レビューから引用。
カリフォルニア大学バークレー校Wellness Letter。
ORAC: 誇大評価された抗酸化宣伝Add Stary-wood

Wellness Letter

ORAC: Over-Rated Antioxidant Claims

October 2012

http://www.wellnessletter.com/ucberkeley/feature/orac-over-rated-antioxidant-claims/

 25年前、「抗酸化物質」という単語は一般の人々には目新しかった。今日それはビッグビジネスになり、抗酸化に関連する宣伝をしている製品の販売は2011年米国で650億ドルにも上る。ダイエタリーサプリメントの宣伝だけではなく、ジュースやシリアルやお茶やチョコレート、さらにはボトル入りの水にまで抗酸化の宣伝文句を見つけることができるだろう。「抗酸化物質」-細胞に傷害を与えるフリーラジカルを取り除くのに役立つ物質-は健康増進や病気予防と同義語になった。

 企業にとってより最近の流行は特定の抗酸化物質の量や「スコア」を宣伝したり、他の製品と比較したりすることである。たとえばSilver Palateの新しいシリアルは100gあたり7,300 ORACユニットであると自慢し、Mystic Harvestのパープルコーントルティーヤチップスは6000 ORACユニットと表示している。ORACは酸素ラジカル吸収能oxygen radical absorbance capacityの意味で、科学者が開発した抗酸化状態を測定するためのいくつかの指標のうちの一つである。オートミールやヨーグルトにバオバブの実の粉末を加えるとORACは1gあたり1400となる。Green Cell Technologiesの茶抽出物は100gあたり170万のORACスコアを持つ。

 これらの数字の意味を説明するのは難しい。しかし多分数が大きいことが健康に良いという意味ではない。抗酸化物質の意味についての科学は包装が伝える単純な数よりはるかに複雑である。FDAはリプトンやその他の企業に対して抗酸化物質について誤解を招く違法な宣伝をしないよう警告文書を送付した。しかし他に同類のものが網を逃れている。

 表示で主張されているのとは違って、抗酸化状態を測定する標準法は存在しないし抗酸化能力についての公式な定義もない。科学者が開発したいろいろな試験法にはORACの他にTEAC、TOSC、FRAP、TRAPなどがある。これらは必ずしも同じものを測定していないし一致した結果も出さない。同じ検査を行っていても実験室が違うと違う結果になる。一部の企業はORACを表示しているがどうやって測定したかについては記していない。

 さらにORACやその他の検査値は試験管内のみでの結果である。人体での作用は異なるだろう。

 CFIAはウェブサイトで「ORACとヒト健康影響の関連についてはわかっていないので、食品にORACについて宣伝したりすることは認められない」と注記している。同様の懸念からUSDAは最近ORACデータベースをウェブから除去し、「ORACは食品やサプリメント企業によって製品の宣伝のために常に誤用されてきた」と言っている。専門家の中には食品や飲料表示へのこのような用語の使用はすべて禁止すべきだと考えている人もいる。

 抗酸化宣伝を無視すべきさらなる理由

 ・抗酸化の数値の意味がわからない。たとえばORAC 3700は多いのか少ないのか2900は2400よりいいのか誰が知っているのか?

 ・抗酸化宣伝をしていない製品でも同じくらいであろう

 ・しばしば宣伝は添加した抗酸化ビタミンなどのせいである

 ・他の食品との比較は誤解を招くものが多い

 ・特定の一つの抗酸化物質だけ比べるのは誤解を招く。

 基本は抗酸化を謳う宣伝は購入の才の参考にしないこと。抗酸化サプリメントは必要ない場合が多いし、摂りすぎは有害であるかもしれない。色とりどりの野菜や果物を摂るのがよい。米国食事ガイドラインに従えばたくさんの抗酸化物質を摂れるだろう。

一方,本blogで以前,「震災復興をダシにしたと思われる農水省事業」として取り上げた農水省事業の平成24年度成果発表会(2013年6月25日宮城県仙台市で開催)資料がウェブ上で公開されている。
その資料(pdfファイル約9MB,8-9ページ)から一部引用する。
1研究の背景・課題
・ 被災地の復興にあたっては、生産設備等の再建のみならず、生産される農産物の高付加価値化を考慮するべきであり、そのための重要なファクターの一つに農産物等の健康機能性が上げられる。
・ 野菜の健康機能性に関しては、科学的根拠が少なく、その知見の集積が求められている。

2研究の目標
宮城県の施設栽培農産物の高付加価値化を目的として、宮城県が生産地域となりうる野菜・果物についての健康機能性研究(抗酸化能、糖尿病予防作用、眼疾患予防作用)と機能性成分等を高めた野菜・果物の生産方法の実証研究を進める。

3研究の内容
・ 抗糖尿病アディポネクチン様作用を発揮するオスモチンの定量法を確立し、果菜類での含有量変動を明らかにし、マウスを用いた糖尿病予防作用メカニズムの解明を行う。
・ ホウレンソウに含まれるルテイン量の栽培条件による変動調査を行うとともに、ヒト生体内のルテイン量の測定を行い、マウスを用いたルテイン投与による眼疾患予防研究を行う。
・ イチゴ、ナス科野菜、ホウレンソウなど野菜等の品種・系統、あるいは栽培条件等による抗酸化能値の変動や抗酸化能を示す成分の同定などを通じて健康機能性を明らかにし、野菜の高付加価値化を図る。

4研究成果概要
・ 抗オスモチン抗体(抗糖尿病)を作製し、ELISA法によるオスモチン測定法を開発して、ナス科野菜中のオスモチン含有量を測定したところ、トマト>ナス>ピーマンの順に高く、塩ストレス(0.5%NaCl)をかけたトマトは通常栽培のトマトの1.5倍のオスモチンを含有していた(表1)。
・ 寒締め栽培により、ホウレンソウ中のルテインを含むカロテノイド類(約20%増)(図1)やポリフェノール(約2倍増)が増加した。蔗糖、ビタミンCも増加したが、マイナス要因である硝酸やシュウ酸に増加は認められなかった。
・ 宮城県特産あるいは宮城県を主産地とする野菜の抗酸化能(新鮮重100gあたりのH-ORAC値)を測定したところ、せり、みつば、ナス、春菊において3000mmolTEを超える高い値を示した(図2)。同一品目における産地間差はあまり無かったが、収穫期の遅い方が抗酸化能が高くなる傾向が認められた。

これが,東日本大震災の農業分野における復興支援として行われている農水省事業の一部である。私の考えは,以前のエントリーで述べているので繰り返さない。前半に食品安全情報blogから引用した3つのレビューと農水省事業平成24年度成果発表会資料をじっくり読み比べていただきたい。

なお,以前のエントリーに,この農水省事業と東大及び慶応大医学部との関わりについて確認できなかった旨の追記を掲載したが,平成24年度発表会資料を見ると,参画研究機関の中に,両大学が掲載されていた。
posted by itoh at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする
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