2016年01月16日

書評『「健康食品」のことがよくわかる本』(1)

まず、本書の目次は出版社の本書紹介ページを参照いただきたい。

最初に結論的なことを言ってしまうと、本書で最重要ポイントは、次の部分ではないかと思う。
食品の機能を理解し活用するために最も重要な情報は、機能性表示ではなく栄養成分表示です。栄養成分についての表示制度を整備しそれを一般の人々に上手に利用してもらうための教育や啓発こそが国民の栄養増進にとっては最も大切で優先的に対応すべき課題なのですが、日本ではそれらに取り組むより先に機能性表示を強行しました。この事実は、この制度が国民の健康増進が目的ではないということを明確に示しています。
(194ページ)

本書は畝山氏ならではの構成で、まず医薬品や食品の安全性を概観した上で、欧米の事例を交えながらダイエタリーサプリメントや食品の機能性表示について詳しく解説して、終章の結論にたどり着く、といった構成になっている。私の不勉強かもしれないが、こうした構成で「健康食品」を解説した文献は見たことがない。こうした構成で「健康食品」を解説できるのは畝山氏だからこそだと、目次を見てまず感心した。
本来であれば本書の最初から順を追って読み進めていくべきとは思うが、最初に終章を読んでから第一章に戻って読み進めていくのも良いかもしれない。

また、「健康食品」そのものがどういう性質のものか、次のように鋭く指摘されている。
どんな食品にもリスクとベネフィットがあるので安全な食べ方をすることで安全を確保するのです。そして安全な食べ方、というのは、いろいろな食品をバランス良く食べることです。特定の食品や成分を大量に継続的に食べるような「健康食品」そのものが食品安全の考え方に反するものです。皮肉に聞こえるかもしれませんが、健康食品こそがもっとも不健康なのです。
(198ページ)

ここで述べられていることは日ごろ畝山氏が自身のblog等で指摘されていることだし、公的機関の公衆衛生部門からも常に同様のアドバイスが示されている。ごく当たり前のこと、それが重要であってマジックフードなど存在しないのだが、人間の悲しい性なのか、魅力的な文句に惹かれて怪しげな商品に手を出すことは止むことがない。
しかも、本blogでも度々批判的に紹介しているように、行政組織などの公的機関(主に産業振興部門)が、率先してマジックフードがあるかのごとく宣伝するまでになっている。その最たるものが、安部晋三氏の意向という政治的な意図から制度化された「機能性表示食品」制度である。
「機能性表示食品」制度の定義を、消費者庁の資料から引用しておく。
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものです。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。

この科学的根拠に基づいたが如何に脆弱な根拠によるものか、「機能性表示食品」制度よりも厳しい審査が行われている 特定保健用食品(トクホ)でさえかなり脆弱な”科学的根拠”に基づいていることが、本書で指摘されている。

本書終章で畝山氏は、食品表示について次の2つについて提言している
表示に関しては、国民の健康のために、科学的根拠が確立されている栄養成分表示の充実を提言します。もちろん表示が有効に活用されるためには上手な利用方法についての教育を提供する必要があります。あるかないかわからない誤解を招く「機能性」について考えるのはそのずっと後のことです。

食品で経験した有害事象もできる限り報告し人類の知恵として集積しよう、というのがもうひとつの提言です。

私なりに言い換えれば、食品表示に必要なのは、基本的な栄養表示をしっかり示すこと、食品のベネフィットのみでなくハザードもデータペース化して公に活かしていく、そうした情報を生活の中で活かすためのリテラシー教育、この3本柱ということになる。
公的機関の産業振興部門や企業にとっては全然面白くない内容かもしれないが、必要とされながら実は今まであまり省みられなかった点と言えよう。


今回は、『「健康食品」のことがよくわかる本』の終章から、本書の勘所について私なりにまとめてみた。
次回、本書第一章から概観したい。
posted by itoh at 14:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/432631197
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック