2016年01月16日

書評『「健康食品」のことがよくわかる本』(2)

第一章は医薬品、第二章は食品の安全性について解説されている。
第一章では、用量-反応曲線や有効量と毒性量について触れながら、医薬品の安全性評価や薬理評価について解説されている。この点は、農薬や指定食品添加物の安全性を理解する上でも必要な概念である。この辺をさらに詳しく知りたい場合は、畝山氏の既刊書を参考にすると良いだろう。
第一章の一番のポイントは、次の部分だろう。
患者さんの役にたつという心理的な達成感がなくとも働き続けられる、開発が失敗しても失業したりする心配はない、という状況でなければ高い倫理などきたいできるはずもありません。
(20ページ)

もちろん、達成感も必要だろうし失敗を真摯に受けとめて反省することも必要だろう。しかし、心理的な圧迫や失業のリスクを背負い乗り越えるだけの土台がないと、とても医薬品など開発できないということ。
畝山氏の解説によれば、医薬品は、膨大な情報や制度に支えられているもので、その「価値」は化合物そのものにではなくその背景にある「情報」にある。だからこそ、その「情報」を得るために膨大な時間とお金がかかる

第二章で解説されている食品の安全性についても、詳しくは畝山氏の既刊書を読むと良いが、第二章でも基本的な部分は解説されている。ポイントは、リスク分析(リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーション)を基本とし、具体的にはHACCP(農業生産現場ではGAP)によって運用される。生産側はもちろん、消費者側も責任分担しなければならない部分があり、それは表示を読んで指示に従って適切な調理をすることであると、畝山氏は指摘している。
畝山氏は第二章で、次の点を覚えておくようにと指摘している。
食品の安全性の基本となっているのは食経験とリスク分析で、リスク管理のための最良の方法は、リスク分散のために特定のものだけを食べずいろいろなものを食べるということである
(39ページ)

第二章の後半では、具体事例を挙げながら、普通の食品の危険性が解説されている。ここでは、身近な食品でも案外安全性がきちんと理解されていない、或いは分かっていないということについて、詳しく解説されている。

第三章と第四章では、いよいよいわゆる「健康食品」について、国内外の具体的事例を挙げながら詳しく解説されている。ここは、本書をじっくり読んでいただきたい。例えば、プロバイオティクスの摂取による副作用が実際に報告されていることを確認して、いかに日本の特定保健用食品(トクホ)が科学的に脆弱なのか、そのトクホよりさらに科学的に脆弱な「機能性食品表示」制度が信頼に足る制度なのか、じっくり考えていただきたい。

また、度々「健康食品」を医薬品と比較して解説されているが、「健康食品」の科学性がどういうものか、次の畝山氏の文章を読んで、良く考えていただきたい。
医薬品の安全性と有効性の確認のための試験には自由度が全くないような厳しい取り決めが発達してきたのです。大学の研究者は「研究の自由」という大義名分を隠れ蓑にすれば、研究上の不正行為をするのはずっと簡単です。
(169ページ)

これは、大学だけでなく、公的な試験研究機関も当てはまる。以前のエントリーでも触れたが、例えば地方公共機関の場合、地方自治法や地方公務員法で、住民の福祉の増進を図ること全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することが規定されている。その基本的な立場を忘れ、目先の成果取りの為に科学的に脆弱な根拠に依拠して業務に携わることは、関係法令に抵触する恐れすらあることを自覚していただきたい。

最後に、畝山氏の次の解説を挙げておく。
野菜や果物をたくさん食べることががんの予防になんらかの役割があったとしても、それは特定の成分だけをたくさん摂ることによっては代替できないという考え方が優勢になっています。
(179ページ)

この文章を読めば、いわゆる「健康食品」が本当に必要なものなのか、分かるのではないだろうか。


以上、先のエントリーと併せて、私なりに『「健康食品」のことがよくわかる本』の書評をまとめてみた。
必ずしも、私の読み方が畝山氏の趣旨の沿ったものとは限らない。
是非本書を手に取って何度も読み返していただき、「健康食品」とは何なのか、「機能性食品表示」制度とは何なのか、健康に必要な食生活とは何なのか、各自でじっくり考えていただきたい。
そうすれば、幽霊(187ページ)に惑わされることが少なくなり、より健全な食生活に出会えるだろう。
posted by itoh at 20:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする
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