2016年03月08日

東日本大震災から5年

東日本大震災から今週末で5年になるが、国内外で様々な震災関連の情報が発信されている。
国内メディアから発信される情報は、私の個人的な印象ではほとんど"使えない"内容。一方、海外で発信されている情報には、首肯するものが幾つかある。
いずれも食品安全情報blogでレビューされているものだが、次の2点を挙げておきたい。

Scienceの今週号は福島特集
メルトダウンから5年後、福島近くに住むのは安全か?(リンク先4番目のレビュー)

二つ目のリンク先で取り上げられた高校生の取り組みについては、国内メディアでも紹介されていた。こうした科学的知見に基づく情報発信がなぜ大人にできないのか、素朴な疑問だ。
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2016年01月30日

いわゆる「健康食品」に関する説明会

食品安全委員会主催『いわゆる「健康食品」に関する説明会』に参加した。
食品安全委員会主催説明会は初参加だったが、参加者との質疑応答時間が1時間あり、色々な意見を聞くことができた。

様々な立場の意見があった中で共通して指摘されていたのは、「リテラシー教育の必要性」だったのではないかと思う。
きちんとした品質の製品を提供するのは当然だし、「健康食品」を利用するのであれば利用者各々に合った適切な使い方で用いられるべきなのも当然なのだが、そのことが為されていない。そもそも、多くの人たちには「健康食品」は必要ないものであることは、幾つかの科学的レビューから明らか。
ただ、そうした様々な情報が消費者にきちんと伝えられていない。消費者自身、そうした情報を見聞きしても、それを理解するための基礎知識が乏しいのもまた事実。

「健康食品」に限らず、リテラシー教育の必要性が数年前から指摘されているものの、大きな動きにはなっていないのが残念。昨年末の食品安全委員会の「健康食品」に関する提言をキッカケに、食の安全に関するリテラシー教育が広がることを期待したい。
posted by itoh at 13:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする

ダイエタリーサプリメントに対する考え方

「健康食品」について、昨年末に食品安全委員会から提言が出されたが、リスク評価機関の提言をリスク管理機関がどう受け止めて運用していくのか、そこが大きな問題だと思う。だからといって、何も情報発信しなくて良いというわけではないので、今回の食品安全委員会の提言は、国政レベルでこうした情報発信していくんだという、新たな局面にもなったのかなと思っている。
そう思っていたら、今週の食品安全情報blogで、ダイエタリーサプリメントについてのレビューが幾つかあった。
■[FDA]消費者を安全でないサプリメントから守ることに前進
ダイエタリーサプリメント:さらなる怖いニュース(3番目のレビュー)
先に私なりにレビューしたuneyama氏の新著書と併せて、ぜひ読んで欲しい。
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2016年01月16日

書評『「健康食品」のことがよくわかる本』(2)

第一章は医薬品、第二章は食品の安全性について解説されている。
第一章では、用量-反応曲線や有効量と毒性量について触れながら、医薬品の安全性評価や薬理評価について解説されている。この点は、農薬や指定食品添加物の安全性を理解する上でも必要な概念である。この辺をさらに詳しく知りたい場合は、畝山氏の既刊書を参考にすると良いだろう。
第一章の一番のポイントは、次の部分だろう。
患者さんの役にたつという心理的な達成感がなくとも働き続けられる、開発が失敗しても失業したりする心配はない、という状況でなければ高い倫理などきたいできるはずもありません。
(20ページ)

もちろん、達成感も必要だろうし失敗を真摯に受けとめて反省することも必要だろう。しかし、心理的な圧迫や失業のリスクを背負い乗り越えるだけの土台がないと、とても医薬品など開発できないということ。
畝山氏の解説によれば、医薬品は、膨大な情報や制度に支えられているもので、その「価値」は化合物そのものにではなくその背景にある「情報」にある。だからこそ、その「情報」を得るために膨大な時間とお金がかかる

第二章で解説されている食品の安全性についても、詳しくは畝山氏の既刊書を読むと良いが、第二章でも基本的な部分は解説されている。ポイントは、リスク分析(リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーション)を基本とし、具体的にはHACCP(農業生産現場ではGAP)によって運用される。生産側はもちろん、消費者側も責任分担しなければならない部分があり、それは表示を読んで指示に従って適切な調理をすることであると、畝山氏は指摘している。
畝山氏は第二章で、次の点を覚えておくようにと指摘している。
食品の安全性の基本となっているのは食経験とリスク分析で、リスク管理のための最良の方法は、リスク分散のために特定のものだけを食べずいろいろなものを食べるということである
(39ページ)

第二章の後半では、具体事例を挙げながら、普通の食品の危険性が解説されている。ここでは、身近な食品でも案外安全性がきちんと理解されていない、或いは分かっていないということについて、詳しく解説されている。

第三章と第四章では、いよいよいわゆる「健康食品」について、国内外の具体的事例を挙げながら詳しく解説されている。ここは、本書をじっくり読んでいただきたい。例えば、プロバイオティクスの摂取による副作用が実際に報告されていることを確認して、いかに日本の特定保健用食品(トクホ)が科学的に脆弱なのか、そのトクホよりさらに科学的に脆弱な「機能性食品表示」制度が信頼に足る制度なのか、じっくり考えていただきたい。

また、度々「健康食品」を医薬品と比較して解説されているが、「健康食品」の科学性がどういうものか、次の畝山氏の文章を読んで、良く考えていただきたい。
医薬品の安全性と有効性の確認のための試験には自由度が全くないような厳しい取り決めが発達してきたのです。大学の研究者は「研究の自由」という大義名分を隠れ蓑にすれば、研究上の不正行為をするのはずっと簡単です。
(169ページ)

これは、大学だけでなく、公的な試験研究機関も当てはまる。以前のエントリーでも触れたが、例えば地方公共機関の場合、地方自治法や地方公務員法で、住民の福祉の増進を図ること全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することが規定されている。その基本的な立場を忘れ、目先の成果取りの為に科学的に脆弱な根拠に依拠して業務に携わることは、関係法令に抵触する恐れすらあることを自覚していただきたい。

最後に、畝山氏の次の解説を挙げておく。
野菜や果物をたくさん食べることががんの予防になんらかの役割があったとしても、それは特定の成分だけをたくさん摂ることによっては代替できないという考え方が優勢になっています。
(179ページ)

この文章を読めば、いわゆる「健康食品」が本当に必要なものなのか、分かるのではないだろうか。


以上、先のエントリーと併せて、私なりに『「健康食品」のことがよくわかる本』の書評をまとめてみた。
必ずしも、私の読み方が畝山氏の趣旨の沿ったものとは限らない。
是非本書を手に取って何度も読み返していただき、「健康食品」とは何なのか、「機能性食品表示」制度とは何なのか、健康に必要な食生活とは何なのか、各自でじっくり考えていただきたい。
そうすれば、幽霊(187ページ)に惑わされることが少なくなり、より健全な食生活に出会えるだろう。
posted by itoh at 20:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする

書評『「健康食品」のことがよくわかる本』(1)

まず、本書の目次は出版社の本書紹介ページを参照いただきたい。

最初に結論的なことを言ってしまうと、本書で最重要ポイントは、次の部分ではないかと思う。
食品の機能を理解し活用するために最も重要な情報は、機能性表示ではなく栄養成分表示です。栄養成分についての表示制度を整備しそれを一般の人々に上手に利用してもらうための教育や啓発こそが国民の栄養増進にとっては最も大切で優先的に対応すべき課題なのですが、日本ではそれらに取り組むより先に機能性表示を強行しました。この事実は、この制度が国民の健康増進が目的ではないということを明確に示しています。
(194ページ)

本書は畝山氏ならではの構成で、まず医薬品や食品の安全性を概観した上で、欧米の事例を交えながらダイエタリーサプリメントや食品の機能性表示について詳しく解説して、終章の結論にたどり着く、といった構成になっている。私の不勉強かもしれないが、こうした構成で「健康食品」を解説した文献は見たことがない。こうした構成で「健康食品」を解説できるのは畝山氏だからこそだと、目次を見てまず感心した。
本来であれば本書の最初から順を追って読み進めていくべきとは思うが、最初に終章を読んでから第一章に戻って読み進めていくのも良いかもしれない。

また、「健康食品」そのものがどういう性質のものか、次のように鋭く指摘されている。
どんな食品にもリスクとベネフィットがあるので安全な食べ方をすることで安全を確保するのです。そして安全な食べ方、というのは、いろいろな食品をバランス良く食べることです。特定の食品や成分を大量に継続的に食べるような「健康食品」そのものが食品安全の考え方に反するものです。皮肉に聞こえるかもしれませんが、健康食品こそがもっとも不健康なのです。
(198ページ)

ここで述べられていることは日ごろ畝山氏が自身のblog等で指摘されていることだし、公的機関の公衆衛生部門からも常に同様のアドバイスが示されている。ごく当たり前のこと、それが重要であってマジックフードなど存在しないのだが、人間の悲しい性なのか、魅力的な文句に惹かれて怪しげな商品に手を出すことは止むことがない。
しかも、本blogでも度々批判的に紹介しているように、行政組織などの公的機関(主に産業振興部門)が、率先してマジックフードがあるかのごとく宣伝するまでになっている。その最たるものが、安部晋三氏の意向という政治的な意図から制度化された「機能性表示食品」制度である。
「機能性表示食品」制度の定義を、消費者庁の資料から引用しておく。
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものです。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。

この科学的根拠に基づいたが如何に脆弱な根拠によるものか、「機能性表示食品」制度よりも厳しい審査が行われている 特定保健用食品(トクホ)でさえかなり脆弱な”科学的根拠”に基づいていることが、本書で指摘されている。

本書終章で畝山氏は、食品表示について次の2つについて提言している
表示に関しては、国民の健康のために、科学的根拠が確立されている栄養成分表示の充実を提言します。もちろん表示が有効に活用されるためには上手な利用方法についての教育を提供する必要があります。あるかないかわからない誤解を招く「機能性」について考えるのはそのずっと後のことです。

食品で経験した有害事象もできる限り報告し人類の知恵として集積しよう、というのがもうひとつの提言です。

私なりに言い換えれば、食品表示に必要なのは、基本的な栄養表示をしっかり示すこと、食品のベネフィットのみでなくハザードもデータペース化して公に活かしていく、そうした情報を生活の中で活かすためのリテラシー教育、この3本柱ということになる。
公的機関の産業振興部門や企業にとっては全然面白くない内容かもしれないが、必要とされながら実は今まであまり省みられなかった点と言えよう。


今回は、『「健康食品」のことがよくわかる本』の終章から、本書の勘所について私なりにまとめてみた。
次回、本書第一章から概観したい。
posted by itoh at 14:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする