2010年09月18日

HTLV-1(1)

HTLV-1ウイルスは,ヒトTリンパ好性ウイルス(Human T-Lymphotropic Virus type1)の略称。
ちなみに,エイズウイルス(HIV-1)はかつてHTLV-3と呼ばれていたが,エイズウイルスとHTLV-1ウイルスとは異なるウイルスなので,要注意。
両ウイルスとも,その発見にアメリカ国立衛生研究所(NIH)のロバート・ギャロが貢献している。

ヒトが何故HTLV-1ウイルスに感染し,また世界的に見て感染者数に地域的偏りがあるのか,はっきりとしたことは分かっていない。
ただ,文化人類学の視点からは,ホモ・サピエンスの移動に関係するとの指摘がある。
世界的に見ても多くの感染者数がいる日本列島においても,九州島や沖縄諸島,四国島西部が最も多く,次いで東北地方や前述以外の西日本と続き,東海地方や関東地方は少ないとされている。この地理的分布の偏りについては,縄紋時代から弥生時代にかけての古モンゴロイドと新モンゴロイドの移動と関係が指摘されている。つまり,古モンゴロイドはHTLV-1キャリア,新モンゴロイドはHTLV-1ノンキャリアとの前提に立った仮説である。
世界的にみても,カリブ海沿岸地域,南米アンデス地域,中近東,アフリカに多くヨーロッパ等は少ないとされており,この仮説を支持するものとなっている。
アンデスの1,500年前のミイラから,HTLV-1の遺伝子が検出された(「成人T細胞白血病<ATL>とHAM」より)ことも,この仮説を支持している。

近年,感染者の移動等によって,関東・関西地方等の感染者数は少ないとされる地域にも感染者の増加が指摘されている。したがって,感染者数の多い地域限定の対策では不十分であり,HTLV-1の全国的な周知と対策が求められている。



HTLV-1キャリア推定数 ATL患者の地理分布 抗HTLV-1抗体陽性率の分布 世界のHTLV-1の集積地域の分布
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2010年09月09日

国のHTLV-1ウイルス対策に大きな動き

既に各所で報道されているが,HTLV-1対策で,大きな一歩となる動きがあった。

2010年9月8日,菅直人総理大臣や仙谷由人官房長官ら政府が,日本からHTLVウイルスをなくす会代表の菅付加代子氏,はむるの会理事の石母田衆氏,ATLを発症した浅野史郎氏ら患者団体の陳情を受けた。
その中で,官邸にHTLV-1ウイルス対策の特命チームを作り,感染拡大防止や治療方法の開発に乗り出す方針を示したとのこと。
今回の陳情は,浅野史郎氏の要請で実現したらしい。

この陳情自体で,HTLV-1ウイルス治療が具体的に前進したわけではないが,政府がかなり大きな一歩を踏み出したと言えるだろう。

今回のことは浅野氏の政治力の影響が少なくはないと思うが,HAM患者でつらい状態であろう菅付氏が,鹿児島県から何度となく上京され,何度となく辛い・空しい思いをしながらも,今日まで活動を続けてこられたことがやっと一つ実った,そんな感じだろうか。
ほかにも,浅野氏を始めとするHTLV-1ウイルス関連疾患を発症された患者の皆さん,キャリアの皆さんの地道な活動が,やっと政府に大きな一歩を踏み出させた,そんな思いだろうか。

HTLV-1ウイルスの根本的な対策の確立は,まだ先の見えない通り道のりではあろうが,出口が見える日が来ることを希望の糧として,これからも地道な活動・支援が必要だ。


今回の動きは,総理大臣や政権与党が代わったとしても,決して止めないで欲しい。


<参考リンク>
西日本新聞社
特集ATL−成人T細胞白血病−制圧へ
posted by itoh at 21:54| Comment(0) | TrackBack(0) | HTLV-1 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月16日

スマイルリボンとHTLV-1

今月(2010年8月)から当blogに,スマイルリボンのバナーを貼っている。
正式名称は,「日本からHTLVウイルスをなくす会」。

ここで言うHTLVとはHTLV-1ウイルスのことで,ATL(成人T細胞白血病)やHAM(歩行障害や排尿障害を引き起こす脊髄疾患)などの原因ウイルスである。
ATLは,浅野史郎元宮城県知事が2009年6月にATL発症を公表したことが複数のマスメディアで全国報道されたが,未だに認知度は高くないと思われる。

今後,本blogでもHTLV-1について取り上げていきたいと思っているが,今回はスマイルリボンが現在展開している署名活動について紹介したい。

詳細については,「署名活動ご協力のお願い(pdfファイル)」「署名用紙(pdfファイル)」を参照していただきたいが,今までの厚生労働省のHTLV-1対策は全く無策であると言え,特に1990年度に報告されたいわゆる重松報告以降,HTLV-1対策は事実上放置されてきた。
スマイルリボンの代表者である菅付加代子氏を始めとする関係者の地道な活動によって,2009年度末,厚生労働省もようやく重い腰を上げる方向に変わりつつある(西日本新聞2010年6月10日「厚労省 ATL全国一律対策 方針を転換 自治体通知 「妊婦へ情報提供を」」)。
この署名活動は,厚生労働省の動きを鈍化させないよう,またHTLV-1対策を進めるよう,国会に働きかけるものだ。

署名活動ご協力のお願い(pdfファイル)」には,署名提出締め切り日が(2010年)8月30日となっているが,2010年12月まで延長するとのこと。

もし関心を持った方がいたら,ぜひスマイルリボンのウェブサイトを見ていただきたい。
posted by itoh at 22:04| Comment(4) | TrackBack(0) | HTLV-1 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする