2016年07月10日

穀物の発芽の有無で栄養上の違いはあまりない

1か月程前だが、2016年6月6日の食品安全情報blogのレビューに、「発芽穀物はより健康的?」というものがあった。
これは、カリフォルニア大学バークレー校の「Berkeley Wellness」掲載記事のレビュー。日本でも、発芽穀物が健康に寄与するとして取り上げられているが、このレビューによると、栄養上、種子そのものと発芽穀物とに大きな違いはないとのこと。

発芽によって毒性物質が産生される場合があるので、強いて発芽穀物を食べる必要性はないだろう。

発芽穀物ではないが、近年、チアシードがちょっとした流行になっているようだが、食習慣の乏しい食品を取り入れるには、もう少し慎重になった方が良い。種子をそのまま食べる、というより飲み込むような摂取の仕方で、どれほどの効果があるのか疑問。仮に、食品として摂取して劇的な効果が認められるのであれば、過剰摂取による健康被害に注意した方が良い。

ちなみに、"安全なチアシード"として無農薬栽培やオーガニック栽培されたものを推奨している情報もあるようだが、食品の安全性と栽培方法は関係ない。
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2016年03月08日

東日本大震災から5年

東日本大震災から今週末で5年になるが、国内外で様々な震災関連の情報が発信されている。
国内メディアから発信される情報は、私の個人的な印象ではほとんど"使えない"内容。一方、海外で発信されている情報には、首肯するものが幾つかある。
いずれも食品安全情報blogでレビューされているものだが、次の2点を挙げておきたい。

Scienceの今週号は福島特集
メルトダウンから5年後、福島近くに住むのは安全か?(リンク先4番目のレビュー)

二つ目のリンク先で取り上げられた高校生の取り組みについては、国内メディアでも紹介されていた。こうした科学的知見に基づく情報発信がなぜ大人にできないのか、素朴な疑問だ。
posted by itoh at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする

2016年01月30日

いわゆる「健康食品」に関する説明会

食品安全委員会主催『いわゆる「健康食品」に関する説明会』に参加した。
食品安全委員会主催説明会は初参加だったが、参加者との質疑応答時間が1時間あり、色々な意見を聞くことができた。

様々な立場の意見があった中で共通して指摘されていたのは、「リテラシー教育の必要性」だったのではないかと思う。
きちんとした品質の製品を提供するのは当然だし、「健康食品」を利用するのであれば利用者各々に合った適切な使い方で用いられるべきなのも当然なのだが、そのことが為されていない。そもそも、多くの人たちには「健康食品」は必要ないものであることは、幾つかの科学的レビューから明らか。
ただ、そうした様々な情報が消費者にきちんと伝えられていない。消費者自身、そうした情報を見聞きしても、それを理解するための基礎知識が乏しいのもまた事実。

「健康食品」に限らず、リテラシー教育の必要性が数年前から指摘されているものの、大きな動きにはなっていないのが残念。昨年末の食品安全委員会の「健康食品」に関する提言をキッカケに、食の安全に関するリテラシー教育が広がることを期待したい。
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ダイエタリーサプリメントに対する考え方

「健康食品」について、昨年末に食品安全委員会から提言が出されたが、リスク評価機関の提言をリスク管理機関がどう受け止めて運用していくのか、そこが大きな問題だと思う。だからといって、何も情報発信しなくて良いというわけではないので、今回の食品安全委員会の提言は、国政レベルでこうした情報発信していくんだという、新たな局面にもなったのかなと思っている。
そう思っていたら、今週の食品安全情報blogで、ダイエタリーサプリメントについてのレビューが幾つかあった。
■[FDA]消費者を安全でないサプリメントから守ることに前進
ダイエタリーサプリメント:さらなる怖いニュース(3番目のレビュー)
先に私なりにレビューしたuneyama氏の新著書と併せて、ぜひ読んで欲しい。
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2016年01月16日

書評『「健康食品」のことがよくわかる本』(2)

第一章は医薬品、第二章は食品の安全性について解説されている。
第一章では、用量-反応曲線や有効量と毒性量について触れながら、医薬品の安全性評価や薬理評価について解説されている。この点は、農薬や指定食品添加物の安全性を理解する上でも必要な概念である。この辺をさらに詳しく知りたい場合は、畝山氏の既刊書を参考にすると良いだろう。
第一章の一番のポイントは、次の部分だろう。
患者さんの役にたつという心理的な達成感がなくとも働き続けられる、開発が失敗しても失業したりする心配はない、という状況でなければ高い倫理などきたいできるはずもありません。
(20ページ)

もちろん、達成感も必要だろうし失敗を真摯に受けとめて反省することも必要だろう。しかし、心理的な圧迫や失業のリスクを背負い乗り越えるだけの土台がないと、とても医薬品など開発できないということ。
畝山氏の解説によれば、医薬品は、膨大な情報や制度に支えられているもので、その「価値」は化合物そのものにではなくその背景にある「情報」にある。だからこそ、その「情報」を得るために膨大な時間とお金がかかる

第二章で解説されている食品の安全性についても、詳しくは畝山氏の既刊書を読むと良いが、第二章でも基本的な部分は解説されている。ポイントは、リスク分析(リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーション)を基本とし、具体的にはHACCP(農業生産現場ではGAP)によって運用される。生産側はもちろん、消費者側も責任分担しなければならない部分があり、それは表示を読んで指示に従って適切な調理をすることであると、畝山氏は指摘している。
畝山氏は第二章で、次の点を覚えておくようにと指摘している。
食品の安全性の基本となっているのは食経験とリスク分析で、リスク管理のための最良の方法は、リスク分散のために特定のものだけを食べずいろいろなものを食べるということである
(39ページ)

第二章の後半では、具体事例を挙げながら、普通の食品の危険性が解説されている。ここでは、身近な食品でも案外安全性がきちんと理解されていない、或いは分かっていないということについて、詳しく解説されている。

第三章と第四章では、いよいよいわゆる「健康食品」について、国内外の具体的事例を挙げながら詳しく解説されている。ここは、本書をじっくり読んでいただきたい。例えば、プロバイオティクスの摂取による副作用が実際に報告されていることを確認して、いかに日本の特定保健用食品(トクホ)が科学的に脆弱なのか、そのトクホよりさらに科学的に脆弱な「機能性食品表示」制度が信頼に足る制度なのか、じっくり考えていただきたい。

また、度々「健康食品」を医薬品と比較して解説されているが、「健康食品」の科学性がどういうものか、次の畝山氏の文章を読んで、良く考えていただきたい。
医薬品の安全性と有効性の確認のための試験には自由度が全くないような厳しい取り決めが発達してきたのです。大学の研究者は「研究の自由」という大義名分を隠れ蓑にすれば、研究上の不正行為をするのはずっと簡単です。
(169ページ)

これは、大学だけでなく、公的な試験研究機関も当てはまる。以前のエントリーでも触れたが、例えば地方公共機関の場合、地方自治法や地方公務員法で、住民の福祉の増進を図ること全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することが規定されている。その基本的な立場を忘れ、目先の成果取りの為に科学的に脆弱な根拠に依拠して業務に携わることは、関係法令に抵触する恐れすらあることを自覚していただきたい。

最後に、畝山氏の次の解説を挙げておく。
野菜や果物をたくさん食べることががんの予防になんらかの役割があったとしても、それは特定の成分だけをたくさん摂ることによっては代替できないという考え方が優勢になっています。
(179ページ)

この文章を読めば、いわゆる「健康食品」が本当に必要なものなのか、分かるのではないだろうか。


以上、先のエントリーと併せて、私なりに『「健康食品」のことがよくわかる本』の書評をまとめてみた。
必ずしも、私の読み方が畝山氏の趣旨の沿ったものとは限らない。
是非本書を手に取って何度も読み返していただき、「健康食品」とは何なのか、「機能性食品表示」制度とは何なのか、健康に必要な食生活とは何なのか、各自でじっくり考えていただきたい。
そうすれば、幽霊(187ページ)に惑わされることが少なくなり、より健全な食生活に出会えるだろう。
posted by itoh at 20:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境,食品,農業 | 更新情報をチェックする